第21話 チートは教え下手
二人がこちらへ来たところで、稔憲はすぐさま適当に見つけた薬草を掘り起こした。
「これはニガダケ草。採取依頼で『薬草』と書かれているものは間違いなくこれだ。上の葉の部分は体力回復役に使われる。根は熱さましだ。どちらかという依頼はほぼない。ただし、群生していた場合もだが周囲に少し残しておくように。すべて取った場合は罰則がくわえられる」
「……この中からどうやって見つけるのですか?」
「? 見ればわかるだろう」
女の言葉に、稔憲は思わず首を傾げた。
「だぁぁぁっ! それじゃわかる分けねぇだろうが! 誰もかれもがすぐさま鑑定できると思うなとあれほど!」
狩りに言ったはずの隆文が凄い勢いで戻ってきて、突っ込みを入れた。
「鑑定などしておらんが」
「この歩く非常識がっ! ……もういい。俺が教えるから、トニーは適当に魔獣狩ってきて」
「分かった」
隆文の言うことに間違いはない。どうも教えるのは苦手な(あれだけ弟子がいるのだが)稔憲は、女性二人に教えるのを早々に諦めた。
「……とまぁ、ニガダケ草に関する注意事項はこんな感じかな」
隆文の説明を聞きながら、必死にノートにメモを取る女性二人を、稔憲は冷めた目で見ていた。
いくら異世界から来たという触れ込みがあるとはいえ、そう珍しいものをあっさりとだして使うのは如何なものかと。紙は高価なものであり、基本は木を削って使う。隆文曰く「物語あるある」らしいが。
「で、
分かってはいるが、誤魔化すのを期待してあえて聞いた。
……のだが。
あっさりと「ノートです」「白紙が綴じられているもので」とか挙句の果てには「紙は木から作られています」とまで言ってきた。
「あなたが方はどこまでも愚かだな」
「え?」
「ヘブンズには、そのようなものは一切ない。木から紙を作るなど誰も思いつかない」
「でも、宰相さんは……」
「なるほど。かの国で新たな産業にでもしようとしていた、機密事項かもしれないな。猶更原材料は吹聴しないことを推奨するよ」
最悪かの国の方に消されたくなければ。それを言外ににおわせれば、二人とも顔色がなくなっていた。
「
隆文がヒントを与えるかのように、言い聞かせていた。
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