名札入れの中で

 秋川さんと白崎さんは、他の職員さんたちと手分けして、赤ちゃん猫にミルクをあげたり、センターに収容された動物たちにフードや水をあげたり、そうじをしたり、治療をしたりと、テキパキと仕事をしていきました。


 動物愛護センターには、犬や猫がたくさんいました。 あの黒白の子猫もいました。元気そうにしていたので、わたしは少し安心しました。


 黒白の子猫を診察している秋川さんの横で、白崎さんが言いました。


「この子、ウイルスチェックもみんな陰性だったし健康状態も良好だから、山田さんもホッとしたわよね」


「本当は、この子を見つけた山田さんが自分で飼いたかったようだけれど。今は一人暮らしだし、来年から老人ホームに入所することも決まっているからって、電話くれたみたいなのよ。」


 この子猫を見つけてくれたおばあさんが、山田さんです。


「山田さんは、以前はセンターのボランティアもしてくれていたし、ずいぶん、わたしたちもお世話になったものね。譲渡じょうとボランティアさんとも協力して、この子には、優しい飼い主さんを、見つけてあげないとね」


 秋川さんは、黒白の子猫を診察室から、猫たちのいる部屋に連れて行きました。そして、戻ってくる途中で、ふと、足を止めました。

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