最後のごはん
1年前の夏の日、人間のおとうさんとおかあさんが、いつもより、たくさん、ごはんをくれました。
今日が最後だということで。
何が最後なのかは、わたしには、わかりませんでした。
夏は、まだ、始まったばかりです。
もうすぐ、おかあさんに、赤ちゃんが生まれるそうです。
そして、おとうさんのお仕事のつごうで、ここから遠くにお引っ越しするそうです。
そのことは、わたしは、知っていました。おとうさんとおかあさんが、この頃、よく、その話しているのを聞いていたからです。
わたしは、おいしいごはんをたくさんもらったことより、おとうさんとおかあさんが、いっしょにいてくれることがうれしくて、たくさん、しっぽをふりました。
おかあさんが、言いました。
「良い人に、ひろってもらえれば、いいね」
おかあさんは、そう言って、わたしの頭をなでてくれました。
わたしには、おかあさんの言う意味がわかりませんでした。
わたしにとっては、おとうさんもおかあさんも、良い人でしたから。おとうさんとおかあさんより、もっと、良い人なんて、わたしには想像さえできませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます