ドライブ

 その後、わたしは、おとうさんと車に乗りました。


「今日は、おかあさんは、おるすばんなのね。どこにお出かけするのかな」と、わたしは、思いました。


 車の窓から、外を見ていると、いつも行く犬の美容院や公園、ちょっと苦手な動物病院へ行く道とはちがって、知らない景色ばかりが過ぎていきました。


 ずいぶん、長く、わたしは、知らない景色の中を、おとうさんとドライブしました。


 車が止まったのは、山の中でした。


 わたしは、車から、おろされました。

 ここで、おとうさんといっしょに、遊ぶのだと思いました。


 でも、おとうさんは降りてはこず、車のドアがバタンと閉まりました。


 それから、エンジンがかかり、車は走り去って行きました。


 わたしは、びっくりして、車を追って、いっしょうけんめい走りました。


 でも、車は止まりもせず、どんどん道の向こうに小さくなっていきました。

 わたしは反対からやってきた車にはねられそうになり、びっくりして道路のわきの草むらに飛び込みました。


 その間に、おとうさんの車は、見えなくなってしまいました。


 わたしは、わたしに何が起こったのか、わかりませんでした。


「きっと、おとうさんは、急な用事を思い出したんだ。お仕事かもしれない……」


 わたしは、そう思うことにしました。おとうさんには、そんなことも、よくありましたから。


 わたしは、車からおりた所にもどって、おとうさんを待つことにしました。おとうさんが用事をすませて、また、戻ってきた時、わたしがどこかに行っていたら心配するだろうと思ったからです。

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