カラス

 なにかが、わたしをのぞき込んでいます。


 わたしは、気分が悪かったのですが、どうにか、目を開けました。

 もしかしたら、おとうさんか、おかあさんが、迎えに来てくれたのかと思ったからです。


 でも、違いました。


 わたしを見ていたのは、カラスでした。

 いつの間にか、夜が開け、雨は止んで、また、わたしの真上では、お日さまがギラギラと照っていました。

 そのお日さまを背にしたカラスは、よけいに真っ黒に見えました。

 カラスは、言いました。


「おや、まだ、この捨て犬、生きてやがる」


 捨て犬ですって?!


 わたしは、断じて、捨て犬なんかじゃありません。

 わたしは、変なことを言うカラスにに吠えかかろうとしました。

 でも、わたしには、もう、吠える力が残っていませんでした。

 わたしは、目を開けているのが精一杯で、わずかに、かすれたうなり声を出すことしかできませんでした。


 カラスは、わたしをあわれむように見て、首を振りました。


「自分が捨てられたのが、こんなになっても、まだ、わからないんだな。気の毒なやつだ」


 わたしは、カラスに言い返そうとしましたが、もう眠くて、たまらなくなって、目を開けていることさえ、できなくなりました。


 そのあと、わたしが、どうなったのかは、わかりません。

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