感染症×ネットゲーム!群像劇で複層的に描かれる謎と蝕まれる日常の恐怖!

のっけから本作以外の話になって恐縮だが、私の好きな映画の中にダスティン・ホフマン主演の「アウトブレイク」と言うパンデミック系パニック映画がある。

一匹の猿から感染症が広がる恐怖を扱った作品だが、序盤は、アメリカのとある街で、徐々に謎の症状に侵されていく住民達の様子や、秘密裏に対策に乗り出す専門家達の様子が描かれている。
本作「オムニシエンスの不在」を読み始めた時にまっさきに思い出したのが、その映画の序盤だ。

映画さながらに、群像劇で描かれていく人々の異変。
きちんと書き分けられたキャラクター属性、巧みな心情&情景描写、並列的に場面転換を繰り返しながらも、それらを少しずつずらすことで徐々に進む時系列。
筆力がないとテンポの悪さが目立つ群像劇だが、この作品には一切その懸念はない。
普通のパンデミック系作品としてでも十二分に楽しめる。

しかし、この作品のプロットにはもう一捻りある。
感染症の発生に、とあるネットゲームの存在が大きく関わっているのだ。
感染症とネットゲーム……一見、なんの関連性もないようなこの二つが、群像劇の中で見え隠れを繰り返し、徐々にその存在を読み手に主張していく。
段階的に明らかになっていく事実、複層的に絡み合う謎、それを解き明かすキーマンの浮上、その見せ方のサジ加減が本当に見事。

現在、フェーズ1(18話)まで読み進めた段階だが、当然ここで止められるような作品ではない。
今後も、物語りの行く末を楽しませてもらおうと思う。

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