オムニシエンスの不在

作者 なかいでけい

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★★★ Excellent!!!

パニックモノ数本は書けそうな濃ゆい恐怖体験を惜しみなく(否、良い意味でもったいつけて)丁寧に描く本作。

何かが起こっているのは間違いないのに、いったい何が原因でどう対処すればいいのか分からず、登場人物はもちろん読者も先の読めない展開に翻弄されてしまいます。

そしてようやく原因が分かった頃には新たな現象が認知され始め……。

作者の恐怖を煽る筆致と、様々な年齢層・社会層の登場人物たちが相互に影響を及ぼし合う構成力には舌を巻きます。

ファンタジーやRPGが好きな方はもちろん、S.キングの『霧(映画版タイトル『ミスト』)』やJ.J.エイブラムスの『LOST』が好きな人にもオススメの1作です。

★★★ Excellent!!!

ネットゲーム世界の設定に、現実が汚染されていくというパンデミック作品。
世間が起こすパニックの具合を、群像劇により精密に書き上げるという素晴らしい作風。
どうしようもなく侵食されていく様は、足場が段々と崩れ去り逃げ道が無くなっていくような感覚に囚われる。
結末は、絶望に塗れたものなのか、それとも希望を残すものなのか。気になって仕方ない。

★★★ Excellent!!!

群衆の日常の、ほんの些細な異変から始まりますが、そのリアリティ故に感情移入してしまい被害が拡大した時にはめちゃくちゃ怖くなります。
砂、咳、上空で目撃される謎の影、デネッタ・アロック。
いくつもの伏線が収束した時、どんなエンディングを迎えるのかが怖くもあり、超楽しみです。
作者の想像力がヤバい大作です!

★★★ Excellent!!!

のっけから本作以外の話になって恐縮だが、私の好きな映画の中にダスティン・ホフマン主演の「アウトブレイク」と言うパンデミック系パニック映画がある。

一匹の猿から感染症が広がる恐怖を扱った作品だが、序盤は、アメリカのとある街で、徐々に謎の症状に侵されていく住民達の様子や、秘密裏に対策に乗り出す専門家達の様子が描かれている。
本作「オムニシエンスの不在」を読み始めた時にまっさきに思い出したのが、その映画の序盤だ。

映画さながらに、群像劇で描かれていく人々の異変。
きちんと書き分けられたキャラクター属性、巧みな心情&情景描写、並列的に場面転換を繰り返しながらも、それらを少しずつずらすことで徐々に進む時系列。
筆力がないとテンポの悪さが目立つ群像劇だが、この作品には一切その懸念はない。
普通のパンデミック系作品としてでも十二分に楽しめる。

しかし、この作品のプロットにはもう一捻りある。
感染症の発生に、とあるネットゲームの存在が大きく関わっているのだ。
感染症とネットゲーム……一見、なんの関連性もないようなこの二つが、群像劇の中で見え隠れを繰り返し、徐々にその存在を読み手に主張していく。
段階的に明らかになっていく事実、複層的に絡み合う謎、それを解き明かすキーマンの浮上、その見せ方のサジ加減が本当に見事。

現在、フェーズ1(18話)まで読み進めた段階だが、当然ここで止められるような作品ではない。
今後も、物語りの行く末を楽しませてもらおうと思う。

★★★ Excellent!!!

群像劇というには、あまりにも断片的なシーンの切り取りによって語られていく本作。
一人ひとりの名前や性格はさほど印象に残らない代わりに、そこに描き出された状況の異常さ、緊迫感、絶望感が、読み手の脳裏に色濃く焼き付く。

この正体不明の脅威を描くのに、非常に上手い手法だと思いました。
だって、この人たち全員助からないんだもの。

同時多発的に起きる爆発事件。
瞬く間に感染していく、数刻で死に至る咳。
罹患者の周りに散らばる砂。
通常ではあり得ない傷を負った状態で、なおも生き続ける謎の外国人女性。

作中で起きている出来事の正体も原因も分からぬまま、パニックだけが拡がっていく。
とあるオンラインゲームとの関連性が示唆されるも、果たしてそれが現実世界にこのような影響を及ぼすことなどあるのか。

このまま人類は滅んでしまうのではないだろうか。
そんな恐ろしい予感を覚えつつも、謎に惹き付けられるように、読む手が止まりません。
とにかく先が気になって仕方のない作品です。続きがとても楽しみです。

★★ Very Good!!

010話目までを読んでのレビューとなります。

唐突に訪れる死の咳が蔓延していく未来の日本。原因不明のそれは、恐ろしい速さで感染を続けていく。
先の見えない恐怖と戦うのか、ただ諦めて死を受け入れるのか。
その一方で怪しい何かが蠢き、明らかな破壊を行なっていく。
世紀末へのカウントダウンはもう始まっているのだろうか。

010話目で2028年7月21日は終わるのだが、ここまでがたった1日の事とは思えない事にまず驚く。
群像劇というのはテンポが悪くなりがちだが、それを巧みに利用すれば恐怖を増幅させて不安を煽ったり、1日を濃密に描き出す事が可能だというのを
、この作品は教えてくれる。

現在の展開としては、謎の何かの存在と謎の咳という二つの軸をメインに置いて、その二つの関連性を探っていくという形だろう。
その鍵を握るのはデネッタ・アロックなのだろうが、彼女はまだ動きを見せない。
これからの展開次第では作品のジャンルすら変わってきそうな予感がする。

兎にも角にも、まだ現状では開けてみるまで何が起こるか分からない、まさにパンドラの箱状態の作品。
これからに期待。

★★★ Excellent!!!

一話毎に視点が変わるお話の進行方法において、キャラクターへの感情移入をどのように持っていくかという課題がある群像劇作品は、書き込み具合をどのくらいの重さに調整するかが非常に難しいと私は思っているのですが、作者さまはそれをいとも簡単にやってのけているように感じます。
というのは一度目を読んだ時に湧いてきた感想で、二度三度と読み返していくうちに言葉選びの丁寧さや、心情描写の掘り下げの程度、視点誘導のタイミングなどが非常に良く練られていることに気付きました。ここまで文を洗練させるのは並みのことではままなりません。
それと、地の文が醸し出す無機質感というか少しひんやりした感じがこの作品の雰囲気に合っていて、登場人物たちが持つ現代人の空気がリアルになっている気がしました。
未完結にもかかわらずここまで完成度の高いこの作品。続きが気になります!

★★★ Excellent!!!

突然訪れたその異変は、語り手によって少しずつ姿を変える。
日常を阻害される者、興味を示さない者、避けられない死の運命を前に凍りつく者──語り手たちの反応は様々であるにも関わらず、凄まじい異常が迫ってきていることが読み手に容赦なく突きつけられる。

数話で世界観に引き込まれる構成の妙が素晴らしいです。
基本的に1話で語り手が切り替わるため、事態を打開出来そうな主役の姿が見えないまま、別のエピソードで以前の語り手がさりげなく死んでいたりするのが不気味さに拍車をかけてきます。
どのような結末を迎えるのか、恐ろしくも楽しみです。

★★★ Excellent!!!

 物語は近未来を舞台にした、多角的な視点より描かれる人類終了パンデミック作品。
 始まりはありふれたゾンビ・パンデミックにも見えるが、読み進めるにつれ、妙な現実感に戦慄するだろう。そして、非現実的な側面には、ホラーにも近い恐怖を感じられるだろう。

『フェーズ』が進むにつれ、現実世界と空想世界は綯い交ぜになってゆく。そして、空想世界の出来事さえも、生々しいほど人間的に描かれ、その境界線は曖昧になってゆく。
 本来、人間が作り出したはずの空想世界が、あたかも生ける人間の世界に感じられる事は、ある感覚としては不気味であるが、現実と空想が綯い交ぜとなった感覚に於いては、最早、違和感を覚える事はないだろう。
 だが、現実的故に、そしてこの作品がSFである故に、個人的にどうしても気になってしまう事がある。それは、この不条理な出来事はなぜ、現実世界に拡散したのか……つまり“彼女”はなぜ、現実世界へ現れたのか、という事……。
 
 現実味のある残酷描写が含まれる為、若干読者を選ぶかもしれないが、物語のひとつの柱を成すゲーム、とりわけ対戦型のオンラインゲームの経験が無い読者にも分かりやすい作品である為、ゲームがひとつのテーマになっているからと敬遠する必要はない。
 
『フェーズ3』も佳境と見える42話まで読み進めたなら、現実世界に広がる原因不明のパンデミックと、空想世界で繰り広げられたネットゲームのシナリオが綯い交ぜになった中で、特に、物語の根幹にかかわるであろう登場人物達がどうなってしまうのかと、迫りくる壁の様な恐怖を覚えるだろう。だが、それは同時に、先の見えないシナリオに対する果てしない期待となり、それらは世界的パンデミックの如く止まらないだろう。

(2018.8.13 42話読了につき、書き替えさせて頂きました)