確かなのは、きっと誰一人とて助からないのだろうという絶望めいた予感だけ

群像劇というには、あまりにも断片的なシーンの切り取りによって語られていく本作。
一人ひとりの名前や性格はさほど印象に残らない代わりに、そこに描き出された状況の異常さ、緊迫感、絶望感が、読み手の脳裏に色濃く焼き付く。

この正体不明の脅威を描くのに、非常に上手い手法だと思いました。
だって、この人たち全員助からないんだもの。

同時多発的に起きる爆発事件。
瞬く間に感染していく、数刻で死に至る咳。
罹患者の周りに散らばる砂。
通常ではあり得ない傷を負った状態で、なおも生き続ける謎の外国人女性。

作中で起きている出来事の正体も原因も分からぬまま、パニックだけが拡がっていく。
とあるオンラインゲームとの関連性が示唆されるも、果たしてそれが現実世界にこのような影響を及ぼすことなどあるのか。

このまま人類は滅んでしまうのではないだろうか。
そんな恐ろしい予感を覚えつつも、謎に惹き付けられるように、読む手が止まりません。
とにかく先が気になって仕方のない作品です。続きがとても楽しみです。

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