少しずつ分析したら異世界語がわかるようになってきた

なぜ異世界転生しても問題なく言葉が通じるのだろう?
こういう質問には、煩雑な前提は、ジャンルが先鋭化した現状においてはいわば“ショートカット”されているのだ、と答えることになるだろう。

そこにきて本作は、異世界転生したら相手の言葉がわからなかったので、頻度分析から初めて相手の言語分析を始めるという、驚きといえば驚きの、そして必然的といえば必然的な営みを始めるのである。

どうも著者は、この作品のために独自言語を設定したようで、魔法の名前や固有名詞の秩序くらいであればファンタジー小説の作者たるもの周到にするものだが、文法構造まで考えるとなると一般読者からしたら狂気の沙汰である。
そして、この手法に挑戦するものにとっては、そういった部分を考えることこそが主題であろう。

こういった営みは、実際に独自言語(アーヴ語)を運用した『星界の紋章』以来である気がするが、そちらの作品よりも圧倒的に言語学的分析が主題となっており、だんだんと記号に過ぎない文章が理解されていくのが私たち読者にも経験されるにおいては、たいへん稀有な読書体験である。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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