我々とは、繰り返す生き物なのだろうか。人間の意味を問うSF。

 人口爆発による、食糧、水不足が嘆かれる、少し未来の東京に、ある巨大な建造物が現れた。主人公、泊翔馬はその正体を探ろうと、バイクを走らせる。
 突如東京に落とされる核爆弾。逃げ惑う人々。その時、正体不明の建造物は、宇宙船という正体を晒し、地球を飛び立つ。

 ……という、緊張感の高い幕開けなのですが、その宇宙船の中で暮らす人々の生活は、非常に穏やかで人間的。お金は意味を失くし、仕事もなくなった人々は、限られたメニューではあるが宇宙食を楽しんだり、ゲームに興じたりします。時折、変わり果ててしまった地球に思いを馳せつつ、今を生きるその様は、人とはどこに行っても、変わらないものなのだろうかと考えさせられます。そう、どこに行っても。

 人類の歴史は、常に戦いの歴史であるとは言いますが、それは宇宙に飛び出そうと、変われないのか。穏やかだった生活に忍び寄る不穏な影は、主人公達を飲み込み、やがて大地へと足を下ろさせます。その先にある未来は矢張り……。繰り返しなのか。

 宇宙を舞台に、手に汗握る戦闘機でのアクションもあり。人とは何なのかを考えさせられるSFです。

 是非皆様も、ご一読。

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