嘘から出たまこと?

異世界転生。
おそらく、誰もが一度は憧れ……とまではいかなくても、妄想するストーリー。
これは、とある「嘘松」少女が、異世界に迷い込む(?)お話です。

この物語の最大の魅力はリアリティであると思います。
冒頭の少女が「アーニャ」というあだ名で呼ばれるようになる理由や中盤のSNSの炎上や書籍化にまつわる出来事は異様なほどに真実味があり、(ある意味で皮肉にも)この「アーニャ」という少女が、本当にこの現実に存在しているのではないかと思わせます。

それでいて、異世界転生というファンタジーの出来事を、どこまでが真実で、どこからがアーニャの嘘なのか。それを深く考えさせる構成になっているのが上手い。この絶妙な書き味のバランスには驚かされるばかりです。

語り手である少女のアーニャに対する感情も非常に共感できます。こんな友達が居たら、こんな態度になるだろうなということを容易に想像させます。

物語にとって、それが真実であるか、嘘であるか、それは二の次でしょう。フィクションであろうと面白ければ良し、ノンフィクションであろうと面白くなければ人は振り向きません。
その意味で、このアーニャという少女は、最良かはともかく最高の語り手であったと言えるのではないかと思いました。

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