異世界に行きたいと思っている人間はこの世界にいったいどれだけいるでしょうか。少なくとも、ラノベ好きの人間ならば、一度くらいは異世界に召喚される自分を想像するのではないかと思います。
これはは、そんな異世界召喚が社会問題化している世界の物語です。
有能な人材が異世界に召喚される。異世界の危機を救うためにです。この界隈ではよく聞く話ですね。
しかし、考えてみれば、異世界に有能な人材を引き抜かれたこちらの世界はどうなってしまうのでしょうか。いずれ、才能を持った人間は誰もいなくなってしまうのでは……?
まあでも、異世界の危機なら放っておくのも目覚めが悪いし……。
ということで、異世界召喚を看過していくと、異世界人は調子に乗り、「ゴミを捨ててほしくって……」ゴミ捨てのために、こちらの人間を拉致する始末……。さすがにそれはいただけない。
異世界人からこちらの世界の人間を守る。そのために結成されたのが『異世界行けない委員会』なのです。
この物語の魅力はなんといってもキャラクターですね。
主人公の鷹広は異世界対策チームのリーダーでありながら、自分は異世界に行きたいと思っている。リーダーらしいところもあるかと思えば、土壇場で自身の「異世界に行きたい」という欲望を満たすための利己的行動に走ったり……。
こういう人間臭さのある主人公は大好きです。
他にも様々な理由で異世界に思うところのあるキャラクターも、それぞれ魅力的ですね。
私がこの作品が気になった最大の理由は、異世界ものに対するメタ的思考をふんだんに詰め込んでいるからです。異世界召喚対策なんて、異世界ものが溢れている今の世の中でないと考えもつかないでしょうし。
遂に、異世界ものもここまで来たなという感じです。コンテンツの円熟を感じます。
書籍版の方も購入して読もうと思います。
皆さんもこれを読んで、昨今の異世界召喚が多すぎるという社会問題について、ぜひ考えてほしいですね。