母の口から語られる、ファンタジックなのろけ話

絵本作家の母が書いていた「魔法使いがお嫁さんを探す」物語。しかし、実はこの話は作り話ではなくノンフィクションで、そのお嫁さんというのが母親だったのです! つまり、本作の主人公である祥太朗は魔法使いと人間のハーフ! 
そして、幼いころから姿を見せず、既に死んでいると思った父親が生きているということを知った祥太朗は、父親を捜そうとするのですか……。

そんな設定の本作ですが、じゃあバリバリのファンタジーなのかというと、そんなことはありません。
舞台は現代ですし、祥太朗が使えるようになる魔法は、コップの中の水をしょっぱくしたり、量を増やしたりするとかいう微妙なものばかり。
父親を捜すと言っても学校に通わなきゃいけないし、それに幼馴染との関係のほうが今は大事。一応母に手がかりを尋ねれば、聞かされるのはロマンチックなのろけ話ばかりで……。

そんなエブリデイ・マジックというジャンルの一作である本作ですが、ぽわぽわした雰囲気のお母さんが実に可愛らしく、母の口から聞かされる少し天然の入った父のエピソードもとても楽しい。
読んでいてほんわかした気持ちになれる。心地よい一作です。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)

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