IT技術対心霊現象! かつてない異種情報戦がここに!

 友人たちと一緒に心霊スポットに行った主人公は、後日スマホの中に撮ったおぼえのない心霊スポットの写真を発見!……するが即削除する。しかし、削除した途端に復活する心霊写真! すると主人公はためらわずにスマホを初期化!

 幽霊などの存在を元からまったく信じていない主人公の性格が強烈で、この一連の現象を「クラッキング」と判断した彼は、自身の持つITスキルを総動員して、この心霊現象との戦いを開始する。主人公が大胆なやりかたで画像を消せば、霊はそれを乗り越えてスマホに画像を送り込み、主人公はそれに対して新たな対策を練るという少年漫画のインフレバトルのような様相を見せる。中盤で主人公がスマホのバッテリーを抜くという身もふたもない手段に出た時点で決着がつきそうなものだが、霊側も人間側もそこからさらに想像を上回る応酬を繰り広げ読者を驚かせてくれるのが楽しい。

 霊的な現象というと正体が掴めないだけに、一般的な手段では対策不能なように感じてしまうが、この作品の場合主人公の手段を選ばない対抗策によって、徐々に心霊現象の限界が浮き彫りとなる構図になっており、IT技術対心霊現象という噛み合いそうもない戦いをきちんと成立させているのがとても斬新。ただのギャグでは終わらない読み応えがある一作だ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)