ハッカーの俺のスマホに消えない心霊写真があるので無限削除したった件。
創代つくる / 大説小切
Func1(){ Delete(); }
ぴろん。
「"この前の心霊スポットどうだった?"か、下らんな……」
スマホの通知が鳴る。今日も今日とて俺のスマホに来る連絡の通知は下らんものばかりだ。いつも、そう思う。そして同時に、律儀に応答する俺もまた馬鹿だと思う。人間関係は下らない。とはいえ無碍に扱うのも合理的ではない。だが実際に付き合ってみても大した事はない。これなら自分の得意な事をしていた方が有意義だ。
しかし、それでも人間関係を維持してしまうのは、自分という人間が愚かだからに過ぎない。結局は人が脳内物質というアナログなもので動く以上、感情を完全に廃することは不可能だ。その
そんな事を考えつつ、メッセージアプリに俺は返答をする
"ただの暗い廃病院に、許可を取って入る以上の意味は無かったな"
"えー、なんか怖かったとか無いのかよ……"
"仮に恐怖が有ったとしても、それが単なる暗い場所への不安や、己の想像力によるものであると分かっている以上、それは単なる現象に過ぎない。スマホが熱で誤動作するのが当たり前であるように、人間が恐怖するのは当然のことだ"
"相変わらずだなー、オマエは。要は怖かったということだろ?回りくどい"
"肯定する。だがそれ以上でも、それ以下でもない"
「全く、何を期待しているのだか……」
そう、実際に恐怖はある。だが、それは単に「暗いから怪我をするかもしれない」とか「不審者や不良が隠れ住んでいるかもしれない」とか、そういうものだ。
それも、廃病院と言っても全く管理されていない訳ではない。ただ半ば無人になった山奥の村落に病院がポツンとあるだけで、親族が来にくいし、だからといって遊ばせておくのも維持費がかかるので、たまに肝試しや撮影にどうかと使われている。
何故そんな事を知っているかというと、そんな肝試しを提案された時に俺が危惧したのは「勝手に知らん人の土地に入っていくのは……法律違反だろう!」というものだったからだ。つまり、とりあえず適当に検索した心霊スポットらしい場所の中で、かつ公的機関や行政が管理しているものを除く"持ち主が分かっている箇所"で俺が連絡を取って、そこに行くという事を決めた。こういうのは先手必勝だ。
なお、他の参加者からはブーイングが発生したものの、勝手に心霊スポットに入ったYoutubeが逮捕された記事を送信したところ、反対意見は無くなった。
しかし、一応は管理された場所に入り込んで勝手に怖がったり、なんなら心霊スポット側も肝試しや撮影用の場所として貸し出すなど、やはり人の考えることは非合理的であるか、あるいは実利的かの二択が多いのだと、つくづく思う。廃病院とて実際に手を尽くした結果として命を落とした人はいるだろうが、その患者の心情を逐一汲み取って感傷に浸るのも恐怖するのも、単なる我々の想像に過ぎない。つくづく、死者よりも……生きている者の方が、遥かに身勝手だ。
ぴろん。
などと思っていたところ、スマホに写真管理アプリからの通知が来る。件の心霊スポットの写真をまとめました、と自動化された機能。そんなに人は場所に想いを馳せるのか?などと思うが、わざわざ機能を無効化するのも面倒で放置している。
が、よくよく考えると、あんな所で自分は写真を撮っただろうか?不審に思って開くと、そこには実際に撮った覚えの無い心霊スポットの写真データが入っていた。
なるほどな……クラッキングか。
クラッキング……よくハッキングと混同して呼ばれるが、実際にはハッキングとは「ITの知識・技術を用い、コンピュータやネットワークといった情報機器やプログラムへの解析・改造・構築を行うこと」を指す。その中で「他者に攻撃的なもの」……つまり勝手に削除したり侵入するものをクラッキングと呼ぶ。明日から使える
余談は兎も角、無人の村落とはいえ、この昨今。全く電波が通っていないということはない。集合等の連絡は当該の心霊スポットで行っている。
また、建物のオーナーとやりとりを一応した際にも通信の履歴が残っているはずだ。どちらにしても、このスマホを使っている……その際に、何かしらの方法でIMEIでも盗んだか?それともIPアドレスとMACアドレスを追ったのか?実際に自分はクラッキングの手法を学んだ訳ではないので、よくは分からんが……どうやら質の悪い悪戯により、知らない間に攻撃をされているようだ。それも悪戯でだ。
写真管理アプリはクラウド接続……まあ要は、GoogleアカウントなりApple IDといったものを通してインターネットに繋がっている。そこに何かしらの方法で写真を送り込んだか?しかし、二段階認証などの通知も無い。となると既存の認証された端末……つまり他のスマホやPCも、既にクラッキングを受けているのか?
……が、とりあえずまずは写真を削除だ。
人間の記憶も絶対ではないが、自分が外出先で管理された屋内の写真を撮るなんて事は、まず有り得ない。SNSにアップした写真などで人が何処にいたのか特定される……なんてことはよくある。仮にアップしなくても、わざわざ写真を撮る必要がない。そして今回、自分は撮られる事はあっても、撮るように要請された覚えはない。集合写真ですら自分のスマホを使ってはいない。つまりクラッキングだ。実際に写真の作成日時や更新日時を見ても、異常な数値になっている。
とりあえずスマホを機内モードに……つまりはBluetoothを含めた電波の一切を断ち切り、写真を削除する。これで暫くは問題ないだろう。あとは専門外だが、まず今のローカルネットワークに不正なアクセスが無いかを確認しよう。ファイヤーウォールの確認を……と考えていたところ。
ぴろん。
と、再びスマホが鳴った。
確認すると、また写真管理アプリに同じ写真が入っている。それも、今度は御丁寧に「どうして削除したのぉおお???」という名前になっている。
……困ったな。どうやら既にスマホ内部に高度なウィルスソフトが仕掛けられていたか。致し方ない。
とりあえず、全てのデータはクラウド上にバックアップしてある。問題ない。
俺はスマホを初期化した。
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