Func2(){ While(1){Delete();} }

 次の日。初期化し終えたスマホを元の状態に回復する前に、まずは自分のPCの作業を完全に終了させ、厳重なウィルスチェックをする。モニター等は兎も角、各OS毎や用途毎にPCを用意しているので、全てをチェックするのは骨が折れた。

 特にサーバー類は止めると一部の人に迷惑がかかる。が、こんな事もあろうかとサーバーは二重化している。とはいえ既にクラッキングの憂き目に遭っている可能性もあるので、念の為に関係者には連絡を取った上で、厳重にウィルスチェックだ。

 スマホ経由であろうと自分が門外漢なりに構築したDMZDeMilitarized Zoneを突破している可能性がある以上、まず全部のコンピューターが安全である事を確認せねばならない。セキュリティに完全は有り得ない。やるなら徹底的にだ。


 同時に、別のスマホを経由してクラウドのアカウントにアクセス。こちらにも当該の写真が復活しているので削除。また、当該スマホのアカウント連携を完全に解除。

 これで、初期化されたスマホには対してアクセスする方法はないはずだ。

 とはいえ、何が起きるかは分からない。普段は使っていないが、念の為に設置してある携帯会社の提供するインターネットサービスを使う。つまり、普段と全く別の回線だ。こちらに接続して、初期化したスマホを最新版にアップデートする。念の為、まだ各種のクラウド用アカウントには連携しないでおこう。

 ……これで概ね大丈夫だろう。



 ぴろん。



 そう思っていた時期が俺にもありました。


 全く舐めていた。まさかここまでガチガチに対策しても初期化を終えた瞬間に「貴様アアア!!!!」などというタイトルで写真がまとめられるとは完全に想定外だ。おかげで普段は使わないネットミームまで使ってしまったではないか。屈辱だ。

 まあいい。とりあえず、どうやら相手は異常なまでのクラッキング技術を「俺のスマホに心霊写真を送りつける」というためだけに使用しているようだ。ならば問題はない。このままメインのネットワークにある機器のセキュリティをチェックしては、セキュリティ本を漁って強化をする。ついでに、通販で最新のセキュリティ本を国内のは当然として海外からも取り寄せている。勉強するのは億劫だが、ITというのは原則としてシステムの仕組みを理解できれば構築も改造も大体はキーボードさえ有れば可能である。問題は、それにかかる時間と金、そして何よりもだ……システムは常に新しく更新され続ける。最新技術とまでは言わなくとも、最低限"大体の相手の技術力"レベルに着いていけなくなれば、そのうちに敗北するのが必定というものだ。IT技術は脳の格闘技。生涯、勉強だ。


 とりあえず、まずセキュリティの改善には数日かかるだろう。サーバーも今回のセキュリティチェックでは何とかなったが、一回は何処かで止めなければなるまい。ついでなので更なる多重化もしておきたい。ついでにRAIDも上位のものにするか。

 だが問題は、このスマホだ。どうしたものか。まさかスマホがネットに繋がった瞬間を狙ってアクセスし、その瞬間にデカいワーム型かトロイの木馬型のウィルスでも仕込んだのか?全くワケが分からんクラッキング能力だが、使い方がアホだ。


 ……とりあえず、俺は少し前まで使っていたPCを立ち上げ、ネット接続を解除し、スマホアプリ開発ツールを開くと、概ねこのような内容のプログラムを書いた。


「もしスマホ内部に新しく画像が追加された場合、その画像を即時に削除する」


 内容は単純だが、内容としては面倒だ。まず定期的にスマホ内部のデータをチェックしなければならないし、それに削除もただの削除では意味がない。念の為に、上から「新しくランダムに生成されたノイズデータを上書きする」というものにした。


 よく人は「データ削除を押せばPCでもスマホでも中のデータが実際に消える」と思っているが、それは大きな誤解だ。大体のデータ削除というのは「そのデータにアクセスできないようにする」だけで、本当にデータが削除されるのは「その部分に新しくデータを上書きする時」なのである。なので、専用の削除アプリなどは、必ず上記のような処理を行う。初期化の時にも、まず実行されるであろうことだ。


 このアプリを当該スマホで開いておく。ついでに、面倒だったアプリのまとめ機能と、全通知をOFFオフにする。このアプリをスマホに送る前に、再び機内モードに切り替え、通信を謝絶する。対症療法でしかないが、一旦これで問題ないはずだ。

 ただ、敵は恐らく別の手段を講じてくることだろう。今度こそPCやサーバーに問題が出てくるのか?そもそも初期化や削除を如何にして感知したのか、全く相手の使ってきた手段が読めない。無理矢理にネットワーク経由でプログラムを送りつけ、画像を自動で生成するプログラムを組んでくる相手だ。どんな手段を使うのか……

 洒落にならん。削除は兎も角、通知OFFまで感知できるのか?そして次は何をするのか……何にせよ更に古いノートPCを引っ張り出してネットワーク上の監視をさせる。これでトラフィック通信の増大を検知したら攻撃は検知できるはず。

 そんな事を考えつつスマホに削除アプリを送信し終え次第、アプリをONにした。



 しばらくしてから、ノイズと共にスマホが震え……そして通知が無音で開く。


"き、貴様アァアァ……ふ、ふざけるなァァァ!!!!自動で削除だとオオオオオォォオ!?何を考えている!?頭おかしいんじゃないか!?"


 馬鹿な……まさか、通知機能。つまりOSまで乗っ取り終えているだと!?まさかとは思うが、簡易的な生成AIまで組み込んでいるのか?罵倒までされるとは完全に想定外だ。この場合どうするべきか?俺は超高速で思考を行い……結論を出した。




 スマホを終了し、SIMカードを抜き取り、大昔の別OSのスマホに差し込んだ。

そのまま今のスマホは再び初期化。今度は電源も入れはしない。念には念を入れ、まだ前のスマホもONにはしない。これで対症療法だが、一旦解決だ……!!

 解決と言ったら解決なのである。少なくとも何か起きるまでは……な!!


 そう思っていた時期が……俺にも、ありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハッカーの俺のスマホに消えない心霊写真があるので無限削除したった件。 創代つくる / 大説小切 @CreaTubeRose

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ