この作品は、ハッピーエンドです。
タグにもありますからネタバレにはならない! ……ですよね?(笑)
ここまで純粋なハッピーエンドを拝見し、「ああ、こんなお話があってよかった」と思っている自分がいます。
魔法を中心に主人公の葛藤や恋愛模様を描きつつ、本質は『家族愛』。
それも、『今の夫婦愛』と『未来の夫婦愛』、さらには『かつての親子愛』までをも巧みに描いている。これでもかという愛情を感じさせてくれる作品でした。
それらの暖かい愛というものを、魔法という一種の『非現実性』を通して、しつこくない程度に、ちょっぴり切なく描いています。
主人公の夢をいう形でファンタジックな世界観を取り入れることにも成功しており、ワクワク感も得られます(ハリポタを連想させられました。懐かしい!)。
これぞエンタメ、そして感動作。堂々と他者様にお薦めできる、ハートフルなお話です。
中学校の英語の宿題が自分の人生を変える事になるなんて、普通は夢想だにしない。でも、主人公の場合は、そんなっちゃったんですねぇ。
しかも、母親から告げられるわけです。「実はね…」と。平たく言えば「あなたは人狼よ。私は狼に身を委ねたの」と。
「えっ! 俺、狼の子なの?」ってな作品です。それでも主人公は非行の道に逸れないんですなぁ。母親を始め、周囲の人の愛情に恵まれて。その温かさが最大の、推薦ポイントです。
さて、本作品に登場する父親は、狼ではなくて、正体不明の魔法使いです。父親探しは子供の定め、いや務め。見付けるには、自分も魔法使いにならなくちゃ…と言う事で、ロールプレイングゲームみたいな展開となります。旅には出ないんですが、レベルは上がって行きます。
最後はね、良い感じで落ち着くべき処に落ち着きます。安心して読み進められる、メルヘンチックな作品です。
私は殆ど一気読みでした。帰宅後までスマホに没頭すると妻が怒り始めるので、通勤電車の道中に限った一気読みでしたが。
主人公祥太郎のお母さんは、絵本作家。母子家庭です。物心ついたときには、お父さんはいませんでした。
お母さんの代表作は『いだいな まほうつかい』という絵本。
魔法使いが盲目の少女と出会い、そして恋に落ちるお話なのですが。
実はコレ。
実話。
祥太郎のお父さんとお母さんの実話なのです。
祥太郎は、魔法使いの掟として、『消えた実父』を探さなくてはいけないのですが……。
とにかく。
とにかく、ですよっ!!
お母さんが非常に可愛く、そして、お父さんはイケメェェエン!!!
拝読し、何度身悶えたかっ!
何コレっ! 天然って、最強っ( ゚Д゚)!! この夫婦、可愛すぎるでしょっ!
テンポ良く進む物語と、会話重視のストーリーは、読みやすい上に感情移入しやすいです。
今日は週末。
是非、このほのぼのとした夫婦のお話におつきあい下さいませ!
これは、優しい魔法使いの御話し。主人公の母は絵本作家。その中でもお気に入りなのは、「いだいな まほうつかい」が登場するシリーズもの。しかしそのシリーズは、ストーリーを追えば追うほど現実味を増していく。そして母から語られた主人公と絵本の「いだいな まほうつかい」との関係。
主人公は自分にも魔法が使えるのでは? と思い、魔法の練習を始める。しかし、そこに忍び寄る影があった。
魔法使いと言えば「ファンタジーや異世界もの」だと思った貴方は、すでに一つ間違いを犯している。これは絵本と現実が地続きになって、絵本が現実になっているのだ。単なるファンタジーや異世界に、主人公が入っていくのではなく、世界の方から主人公にやってくる。今までに見たことのない現代ドラマ的魔法使いなのだ。
そして描き方が独特で、優しい。敵対していたはずの魔法使いも、実は主人公のことを思っていたり、主人公の両親が主人公に対して過保護だったりする。その時間を象徴するのが題名にもなっているコーヒーである。そしてコーヒーを入れるマグカップにも秘密がある。
あなたもコーヒー片手に、この作品を味わって見てはいかがでしょう?
絵本作家の母が書いていた「魔法使いがお嫁さんを探す」物語。しかし、実はこの話は作り話ではなくノンフィクションで、そのお嫁さんというのが母親だったのです! つまり、本作の主人公である祥太朗は魔法使いと人間のハーフ!
そして、幼いころから姿を見せず、既に死んでいると思った父親が生きているということを知った祥太朗は、父親を捜そうとするのですか……。
そんな設定の本作ですが、じゃあバリバリのファンタジーなのかというと、そんなことはありません。
舞台は現代ですし、祥太朗が使えるようになる魔法は、コップの中の水をしょっぱくしたり、量を増やしたりするとかいう微妙なものばかり。
父親を捜すと言っても学校に通わなきゃいけないし、それに幼馴染との関係のほうが今は大事。一応母に手がかりを尋ねれば、聞かされるのはロマンチックなのろけ話ばかりで……。
そんなエブリデイ・マジックというジャンルの一作である本作ですが、ぽわぽわした雰囲気のお母さんが実に可愛らしく、母の口から聞かされる少し天然の入った父のエピソードもとても楽しい。
読んでいてほんわかした気持ちになれる。心地よい一作です。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)