あなたの分まで、私が生きるから

私と娘は薄い布切れを頭に当て、お互いを庇い合いながら数十メートル先の防空壕を目指した。

娘が転んだ。

「足をくじいたの。お願い助けて」

娘が私の足を掴みながら涙を流し懇願した。

炎が、すぐそこまで迫っている。

私は娘の手を踏みつながら「あなたの分まで、私が生きるから」と言った。

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掌小説集「掌に一葉」 楠 新太@現代叙情派 @k_k_namida

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