掌小説集「掌に一葉」
楠 新太@現代叙情派
未来のない未来
外と中の温度差が、私の病室の窓に結露をうくった。それを手で擦り消し、窓の外の降雪に目を輝かせた。
けれど、徐々に、再び窓は結露し、外の景色いつの間にか見えなくなってしまった。
まるで、外を見るなと言われているような気持ちになり、降雪に対する感動は徐々に薄れ、虚しさだけが残った。
私には、窓の外を眺めながら、これから先も決して手に入れることはないであろう「普通の生活」を想像することさえ、赦されていないのかもしれない。
もう明日から、いや、今日から、窓の外を眺めるのも、やめにしよう。
私は結露した窓を複雑な面持ちで見つめ、やがてカーテンをゆっくりと閉めた。
明日の朝は、何を諦めるのだろうか……。
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