方角さえ知らないある国の子供の話
僕の願いは外の世界をこの目で見ることだった。僕達が命を削って育てた作物や、支払った税金がどう使われているのか、ただ漠然と知りたかったのだ。けれど、それをしようとした父は数年前に「偉い人達」によって家から連れ出されたきり帰らない。
母は言った。
「私達に外の世界なんてないのよ」
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