丁寧に生み出されていく彼の世界

科学技術の発展により栄え、そして汚染されてしまった世界。
海底に作られた都市に逃げ込めたのは、極一部の人々だけ。

主人公の棕櫚は地上で蒸気機関の機械を作り、それを人に売って生活をしている。
何処か諦観したような雰囲気を持っているが、読み進めるとすぐにそれが誤りであることに気付く。
彼のこだわりや信条が手に取るようにわかるのは、その所作が非常に丁寧に描かれているからだろう。
読みながらその所作を頭の中で追っていくと、汚染された世界で彼が作り続ける空間が目に浮かぶ。

棕櫚と一緒に住んでいる蛍火という少女。彼女も謎に満ちた存在であるが、それ以上に非常に可愛らしい。思わず何度か読み返しては、彼女の表情などを想像して頬が緩んでしまう。
その背中に生えた羽をふにふにと触れる棕櫚が非常に羨ましい。

今後、棕櫚の創りだすモノがどのように話を広げていくのか、非常に楽しみな作品である。

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