いつか、咲きほこる花の下

作者 かみたか さち

17

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★★★ Excellent!!!

 他者との違いを認める寛容さを失いつつあるいまに、この作品が人目に触れる形で世に出たのには、きっと何某かの意味がある。そんな風に感じる作品です。
 
 異なる二つの種族の対立が、世界の形を歪めていく。閉塞していく世界、その中で青春を過ごし、大人になっていく少年少女たち。次第に世界の歪みは大きくなり、そんな純真無垢な少年たちのいま、そして未来さえも、無慈悲に奪い始める。それでも、と抗い続ける主人公・マサキの姿に、心を打たれる方は多いのではないでしょうか。

 何も変えることはできないのか。何も変えられずに、全てが歪みの中へ消えてしまうのか。長く、曲がりくねった道の先で、主人公たちは何を見るのか。それはぜひ、これからお読みになる方の目で見届けていただきたいと思います。

 他者との違いを否定することで安寧を得るのではなく、認めることで得られる『寛容』という強さ。その先にある『共に生きる』ということの意味。それが失われつつあるいまに、この作品が人目に触れる形で世に出たのは、きっと何某かの意味がある。

 わたしにはそう思えます。

★★★ Excellent!!!

「異なる種族」が共に暮らす世界を舞台とした、主人公達の物語である。
地球人とテゥアータ人の間で徐々に深まる溝、そしてそれに伴い生まれる多くの悲しみ、憎しみ。
読者の目からすれば、彼らの争いを見てどちらかに軍配を振り下ろしたくなるだろう。しかし実際自分達が同じ環境にいたら、果たして平等を貫けるだろうか。そもそも何が正しくて何が正しくないかなんて二分化出来るほど世界は単純ではない。

穏やかにも見える丁寧な描写、淡々と紡がれるストーリーの上で登場人物の台詞は読む人間に感情を与える。
それは背景描写が、どちらかに肩入れをしたものではないからだ。
止めることが出来ない時の流れを巧みに描くことにより、一層彼らの台詞が重みを持っていると思う。

二つの種族はいくつかの選択肢を選び、あるいは捨てて、段々と変質していった。
登場人物たちは、自分一人では覆すことが出来ない大きな流れの中、それでも一人ひとりが精一杯に出来ることを探し続ける。時に絶望し、時に袂を分かち、時に希望を見出しながら一歩ずつ前へ前へと進んでいく。
何が正しいのかではなく、何をすべきなのかを見据えた先。そこにあるのはハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、掴みとった未来である。
苛烈なまでに命を燃やして彼らは生きる。その結末が何であったとしても、きっと後悔はしない。

それぞれが選んだ道と途上をその目で見て欲しい。そう思わせる作品である。

★★★ Excellent!!!

 ちょっとしたネタバレ注意です。

 異星人であるテゥアータ人に支配されて久しい地球での物語。
 支配、と言っても地球人は狭い地区ながら自治が認められていて、テゥアータ人とも比較的平和な関係を抱いていた。
 その自治区である「地郷」で公安部員となった主人公、マサキと、幼なじみのサクラを中心とした人々の生き様を描いている。

 冒頭こそ殺伐とした雰囲気で始まるが、話の序盤は比較的のんびりとしていて、最後までこんな雰囲気なのかな、と思っていた。すっかりあのオープニングは記憶のかなたへと押しやられていた。
 が、テゥアータとの関係が悪化するにつれ、事態はとても深刻になっていく。
 マサキとサクラ、テゥアータの役人のセオの関係も、変化し始める。
 幼いころにはただ漠然と「みんなの笑顔を守る人になる」と誓ったマサキの思いも、形を変えていく。

 異星人どうしでは、一度広がった溝を埋められないのか。
 大きな流れの中では、一個人の力は無力に等しいのか。
 この作品が語りかけていることはそのまま、現代社会で問題となっている人種差別や、もっと身近ないじめといったことに繋がってくるのか、と考えると、とても重いテーマだ。
 変わりゆく情勢の中で若者達が出す結論を最後まで追いかけてほしい。