Across the long and winding road.

 他者との違いを認める寛容さを失いつつあるいまに、この作品が人目に触れる形で世に出たのには、きっと何某かの意味がある。そんな風に感じる作品です。
 
 異なる二つの種族の対立が、世界の形を歪めていく。閉塞していく世界、その中で青春を過ごし、大人になっていく少年少女たち。次第に世界の歪みは大きくなり、そんな純真無垢な少年たちのいま、そして未来さえも、無慈悲に奪い始める。それでも、と抗い続ける主人公・マサキの姿に、心を打たれる方は多いのではないでしょうか。

 何も変えることはできないのか。何も変えられずに、全てが歪みの中へ消えてしまうのか。長く、曲がりくねった道の先で、主人公たちは何を見るのか。それはぜひ、これからお読みになる方の目で見届けていただきたいと思います。

 他者との違いを否定することで安寧を得るのではなく、認めることで得られる『寛容』という強さ。その先にある『共に生きる』ということの意味。それが失われつつあるいまに、この作品が人目に触れる形で世に出たのは、きっと何某かの意味がある。

 わたしにはそう思えます。

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