水の世界で、彼の物語は輝きを放つ

就職先も決まらないままダイビングに没頭する日々を送っていた青年が一頭のイルカと出会い、初めは乗り気でなかったドルフィントレーナーと言う職業に魅せられて行く様を描く青春ストーリー。

陸上での主人公の心理描写はどこか斜に構えていて、歳相応にひねくれていて、大人の世界を冷めた目で見ていて。
反目も迎合もできない、どこか所在無い、所謂難しいお年頃である。

しかしその印象は水族館のドルフィントレーナー採用試験でバディを組んだイルカのビビと水中で『遊ぶ』場面で一変する。
本作の一人称はこのためにあると言っていい。
彼の心象風景が一気に鮮やかに色を帯び加速し始めるシーンに、気付けば一体となってビビと追いかけっこをしている自分が居るのだ。

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