異修羅のほうは異世界チートバトルの極致でこれ以上どうすりゃいいのかと思ったものですが、本作はまた違った意味で極まっています。
これまでの異世界転生ものを下地にして、競技にしちゃっている。ザコ冒険者だと思って絡んできたチンピラをぶっ飛ばしたり、奴隷少女を解放して慕われたりのお約束展開も、ここではただのポイント稼ぎと化していて、すがすがしくすらある。もうこの手の王道展開、使えないですね。
で、これを月並みな書き手が書いたらただのネタ小説で終わってしまうところを、しかし超一流の知能バトルに仕上げているのがさすが。
相手のチートスキルから勝ち筋を予測し、圧倒的ピンチから鮮やかに逆転する爽快感は、商業作品を見渡してもなかなかお目にかかれないほどハイレベル。特に「優しさ」をめぐる一戦は珠玉かと。
ところで作中で最強はハヅキさんってことでOK?
一言でいうと、ホビー系アニメ+なろう系という名作…だが、他のレビューでガッツリ紹介されてるので…
少々違う視点から、この作品の良さを語らせていただく。
作中、異世界へ行くときにチート能力を3つ選んで転生するのだが。これがきちっと分類分けされている。
【無敵軍団】(ネームドフォース)
【集団勇者】(フラッシュモブ)
【実力偽装】(Eランカー)
などなど、実に理解りやすく的確で親しみやすい名称である。
この作品を読み終わった頃には、なろう系小説を読む度に
「今のところで、サプライズ入ったな」「やはりウルトラレアとネームドフォースのコンボは鉄板」
などどいう思考のノイズが入り始めるであろう。
そして気づくのだ、世の『チートは一つだけ』みたいな顔した小説が、いかにチートまみれなのかを…
そして少年(読者)は少し大人になるのであった。ホビー小説なのにね。だからかな。
書いていただいた作者様に感謝を。
とても面白かった。その一言に尽きる。
最初にトラックが出てくるシチュエーション。
それを味わった際に「自分はこの小説に敗北したのだ」と思った。
もう、深夜に膝をたたきながら笑った。
作中の人物は何も疑うことなく大真面目にやってることだから余計におもしろい。
「エントリィィィー!」じゃねえよ!
あとはその勢いでぐいぐいと読み切ってしまい、読後感さわやか。
ホビーアニメ特有のノリと勢いもあれば、恋愛要素もガッツリ生きているし、最後までつっかかることなくストレスフリーで読むことができた。
ヒロインの子めっちゃかわいいですね。とてもかわいい、すき(語彙の喪失)。
いろんな異世界モノを読み、自身がぼんやりと考えていたモヤモヤした感情(言語化しづらい違和感、不快感など)に対して、ズバっと解答を叩きつけているのも凄い。
それも2018年に。ヤバい。先見性の塊。
そうだよな、異世界転生で最もチートなのはそこだよな、と共感しつつ終始楽しく読ませていただきました。
対戦ありがとうございました。
架空のゲーム、『エグゾドライブ』を遊ぶ話です。
カードゲームのデッキ構築のように、複数の『メモリ』を組み合わせてデッキを組んで戦います。
架空ゲームものはピンチになると突然『ピンポイントで役立つ新カード』が出たりします。
そういうのに「ご都合主義を感じる。もっとどんなカードがあるのか開示情報になってる実在カードもののが良い」って思ったことはありませんか?
エグゾドライブでは4つのメモリでデッキを組みます。
そのうち3つは公開情報ですが1つはシークレット。作中人物にも、読者にも伏せられます。
当然、逆転劇の多くはシークレットによりなされます。
このシークレットに「単なるポッと出のピンポイントメタ」ではなくそれまでのシーンで既に出てきたメモリが使われます。
ご都合主義の新カードでなく、
確かにそのピースは公開されているのです。
架空のゲームでありながら実在ゲームものの文脈で組み立てられた構成の巧みさと、
それだけに頼ることなく文体の面白さ、熱さ、胡乱な発想でデコレーションされた傑作です。
コミカライズするという話を聞き一気読みさせてもらいました。
ホビーアニメのお約束と、異世界転生モノのお約束をいい感じに散りばめながらもそれらのお約束を裏切らず、かつ読者の期待を超えていく試合運びやキャラクター達によって紡がれる物語がとても面白かったです!
異世界転生モノの文脈が普通のオタクにも広く行き渡った今、異世界転生のお約束をここまで上手く競技として落とし込んでいるのは本当に凄い!既製品で戦うというメタゲームの雰囲気がとても読み応えがありますし、こういうタイプの話ではノイズになりそうな謎のメモリや、世界に一つしかないメモリなどの存在もホビーアニメの文脈で違和感を無くしているのが凄く上手いなと思わされました。
また本編に登場するステータスやガジェットの説明が展開でカタルシスを与える事に結びついていたり、キャラのバックボーンを匂わせるようになってるのも圧巻でした。
コミカライズ版の連載と単行本の発売、楽しみにしています!
傑作である。
いち読者として(作者に叱られることを覚悟の上で)敢えて大言するならば、この作品が出たことで「異世界転生もの」というジャンルが終わってもいい。
それほどまでに、お約束を総括し、魅力的に活用してみせている。いわば本作は異世界転生ものの集大成であり、ひとつの到達点であり、巨大な間テクスト性の塊である。
――が、そういう意味での『エグゾドライブ』の魅力は、多少web小説界隈に通じた読者なら誰でも解ることであろうから、ここでは本題としない。
私が注目したいのは、「異世界転生もの」としてではなく、サイエンス・フィクションとしての本作が持つ高い完成度である。
そもそも“異世界転生”とは何なのか?
多くの「異世界転生もの」が、この摩訶不思議な現象を単なる舞台装置として扱っている。事故死したら魂が偶然よその世界に転生してしまった。ポンコツ女神の手違いで死んでしまったから詫び転生させてもらった。異世界の魔術的な儀式で救世主として呼ばれた(転生だけでなく転移にもあるパターン)……云々。
テンプレである。別にそれが悪いわけではまったくない。世のフィクションの99%はお約束と類型と模倣と換骨奪胎とアレンジメントと――とにかく先行作品ありきの再生産で成り立っている。名作傑作の類でさえ、そういうものである。
しかし、ひとたび立ち止まって“お約束”の外側からこのジャンルについて考えてみるとき、SFに通暁する読者ならば、きっとひとつの疑問を持つことだろう。
――異世界とは一つだけなのだろうか?
つまり、「転生元」と「転生先」で少なくとも二つの世界がある以上、ほかにもっと多くの、さらなる異世界があると考えてはいけない理由があるだろうか?
もちろん、物語に関わらぬ設定を増やしても大抵ノイズにしかならないのだから、「異世界転生もの」の諸作がそこに触れて来なかったのは英断と言える。
が、こうまで急速にジャンルが成長し、ひとつの爛熟期を迎えつつあるいまこそ、“異世界転生”という現象そのものに照準を合わせ、解体再構築するような作品には大きな意義がある。
本作はそれを、SF的想像力のもとに成し遂げた一個の金字塔である。
人はなぜ異世界へと転生するのか。
なぜ転生者にチート能力が備わるのか。魔法とは何か。
現地人へのマウンティング。トラック轢殺。レベル、スキル、ステータス。
すべてに意味がある。ひとつとして、単なるギャグにもテンプレにも終わっていない。
ホビー漫画めいた少年少女たちの“熱い”ドラマの裏側に、冷徹なSF的論理のレイヤが拡がっている。
世界と世界が生き残りを懸けて相争う、壮大な多元宇宙の進化論が展開されている。
これは異世界の物語ではなく、転生の物語でもない。
これは、“異世界転生”についての物語である。