愛を忘れた茹でダコ

萩原さんという誠実な男性に口説かれた美和さんという女性が自らのセクシャルと生き方、幸せについて葛藤するお話です。胸の奥深くまで染み込んできました。

人との出会い、こと恋愛に関しては選択と後悔が付き物だなあと思います。

それが無くとも成立していた生活の中で「僕に愛されるかどうか選んでください」と選択を迫られるわけですね。

そういうある種の"幸せ"の芽がぽっと生まれてしまうと、何を選んでも一切の未練を残さないって難しい。摘んだら摘んだ、咲いたら咲いたで 生まれるのであろう未来を思うと身動きが取れなくなる。溺れてしまいそうになる。

萩原さんのように奇跡的に誠実な人は実在していて、そういう人…続きを読む

完璧な「好青年」の萩原に飲みに誘われて口説かれながら、
性的マイノリティの美和は、幸せの価値観のあり方を考える。

渋谷のオアシス、ベルギービール、ジャズ。
凛とした30代キャリアウーマンと茹でダコ。

アルコールのためにぐるぐると深淵へ潜っていく思考を、
真正面から突き付けられて、じっと考え込んでしまった。

最大公約数の幸せは、私にとって価値があるんだろうか。

これを深い話だった、って感想を言うこと自体が俺の浅薄さをめちゃくちゃ露呈してる気がするが、なんかすごいわかるっていうか、いやわかんないですね。何もわからない。でもわかる。

萩原さんみたいな人はたまにいて、俺はとにかくそういう人間が怖いんですね。怖がる必要はなにひとつないが、近くに存在していて、どうみても、解剖学者の遡上に上がれば種も目もたぶん全部一致してるのに、のに、別種。それに対するある種の言語化がなされてて、そこはなんか細かいこと抜きではー、なるほど、わかると思った。

あとの細かいことは詳しい人にお任せします。面白かったし読後感も良かったです。