破壊と再生の怪奇譚。障がいを持つ少女の人間ドラマ

自分の感じること、考えることが生きていく上で障がいになってしまう。主人公は、そういう人々の中の一人で、これを書いている私自身もその一人です。

名も知らない誰かの視線、心を掻き乱す喧騒、言葉に隠れる悪意、悪意の流れ弾。

直接、自分を害することのないものを恐怖と捉えることで心は磨耗し、感情は希薄になっていく。生きていく気力も薄れてくる。そんな段階に現在、私はあります。これを障がいだと認識したのも、つい最近です。

しかし、主人公は違います。
一に、障がいと認識し、付き合っている年季が違う。強い。
二に、彼女の障がいを理解し、その上で彼女自身を好いてくれる家族や友人。ただし、クセが強い。
三に、障がいに関することや悩み事を相談できる親しい専門家がいる。現実はお医者さん。

さて、こんな風に書き並べるとホラーかどうか怪しくなりますが、これをホラーとして書き上げているものですから恐ろしい作品です。

まあよくあるホラーものだろうと読み始めた本作は、私自身にタイムリーな共感と感動を与えてくれました。

これから私は、自分の障がいを理解し、受け入れて付き合っていくことになると思います。とても難しく、できるとは到底思えません。もしかしたらこの先、諦めてしまうこともあるでしょう。

ただ、いまは主人公が見る世界を通して自分が見ている世界を見つめ直してみよう思います。

そこにある恐怖を見つめて、彼女たちが見ている世界を想像してみれば、その恐怖がどこから来ているのか分かるかもしれません。

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