うら若き淑女たちのお茶会は回る。大英帝国の闇を背負って。

その時代、中国産の茶葉ラプサンスーチョンは高級品だった。
中国すなわち清は自立した一国であり、英国配下のインドと違い、
中国産の品物は高価で、富裕層にしか手が出せなかったのだ。
1789年、ドーバー海峡の対岸でフランス革命が起こる年のことだ。

半年間の謎の失踪の後、友人たちをお茶会に招いたマデライン。
彼女を取り巻く4人と彼女自身、それぞれの視点から少しずつ、
5人のうら若き英国淑女を巡る社会と世界の情勢が語られていく。
奴隷制度、貧富の格差、共和制の足音、日の沈まぬ帝国イギリス。

富裕層である彼女たちの日常が事細かに垣間見える点に驚嘆する。
例えば、表題にある砂糖がどのように生産されているかに始まり、
流行っていた文学作品、女性の地位や服装、結婚観や経済観など、
丹念に調査・収集した知識がなければ、こんなふうには書けない。

5人の視点で各々少しずつ異なる文体は、海外文学の翻訳のようで、
どこか浮き世離れした上品さがむしろ登場人物に現実味を与える。
1万字に満たない短編であるにもかかわらず、読後感は重くて深い。
私は欧州史に疎いから、提示される情報が新鮮で、興味深かった。

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