追記2 重さの単位

■余談9

 「追記」の余談7で、「長さや距離の単位は、その世界における人体を基準にする」と決めた際、次の疑問が発生した。


 ……この世界、重さの単位は何で決まるんだろう?


 パッと思い浮かんだのは、(長さの基準は既にあるので)「縦・横・高さの決まった容器に入る穀物の重さ」である。一升いっしょうますで米を量るイメージだ。

 あとで調べると、枡はあくまで体積を量る測定器であり、重さ計測用ではなかったが。


 というわけで、既存の重さの単位の由来を調べてみる。


 【グラム】

 摂氏4度の水1リットルの重さが1キログラム。グラムはキログラムの1/1000。

 リットルは容積の単位なので、つまりは「縦・横・高さの決まった容器に入る水の重さ」だ。

 マリーの住む世界には液体の水(H2O)があるので、水の重さは基準に使える。


 【ポンド】

 人間が1日に消費する大麦の重さ。

 大麦1粒の重さが1グレーンで、ポンドはその数千倍。

 この基準を流用する場合は、主食となる穀物を設定する必要がある。


 【貫】

 銅銭の穴に紐を通して(貫いて)1000枚束ねたものの重さ。

 1000枚を束ねるか否かはともかくとして、貨幣の重さも基準に使える、ということだ。

 穴は開いてなくてもいいし、決まった寸法の貨幣でさえあれば金貨、銀貨でも構わない。


 ……と考えたところで、この世界に金銀銅は存在するだろうか、という不安が生じたが。

 液体の水(H2O)が存在する時点で、この世界に存在する物質は、我々が理科の授業で習う「周期表」に載っている元素と大差ないだろう、と期待する(電子と陽子と中性子の組み合わせで元素を作ろうとしたら、多分似た顔触れになる)。ならば、金も銀も銅も鉄もあるに違いない。

 むしろ、ミスリルみたいな架空金属を登場させたい場合に、設定上、要注意かもしれない。


 何を重さの基準にするとしても、穀物や貨幣は恐らく設定する必要があると思う。


■余談10

 ……異世界なのに、何でマリー(Marie)なんてフランス語なんだよ。

 という身も蓋もない疑問を持ち始めると、ドツボにはまる。

 実はマリーは正式に命名するまでの仮名だったが、脳内で定着してしまったのである。


 トールキン『指輪物語』旧訳版では、主人公フロド・バギンズが偽名で「山の下氏」と呼ばれていた。新訳ではアンダーヒルらしい。

 また、アーシュラ・K・ル=グィン『オールウェイズ・カミングホーム』は未来のカリフォルニアが舞台のSFだが、登場人物の名前は〈石が語る〉、〈家路にある女〉などだ。〈家路にある女〉には初出だけ、〈家路にある女〉ウーマン・カミングホームとルビが振られている。

 恐らくはどのような名前であっても、その世界における言語での意味を持つはずである。その意味は、日本語で表現できるのではなかろうか。

 だから、たとえば金髪や青い瞳の登場人物ばかりの異世界ファンタジーだとしても、「日向ヒナタ」「疾風ハヤテ」などの人名でおかしくないと思う。


■余談11

 先日、下記の本を読んでいた。


佐藤勝彦[監修]

『最新宇宙論と天文学を楽しむ本』

PHP文庫 1999年


 この本の「夜空はどうして暗いのか?」の節では、〈夜空の星がみな太陽と同じ明るさを持つとした上で、無限に広い宇宙の中に、星がほぼ均等に分布しているとしたら、夜空でさえも明るくなってしまう〉という「オルバースのパラドックス」が紹介されている。

 均等に分布しているならば、ものすごく遠くの星まで考えに入れれば、どの方向を見ても必ず星が存在するはず。

 星の見かけの明るさは、遠くの星ほど暗くなるが(距離の2乗に反比例)、地球から一定の範囲内にある星の個数は、距離の3乗に比例して増える。結果的に、遠さで暗くなった効果を個数で打ち消し、全天が明るくなってしまう、というわけだ。


 次節「宇宙の膨張が夜空を暗くする」で、〈宇宙が膨張しているということは、かつての宇宙は小さく収縮していた、つまり宇宙には始まりがあった〉という、既に説明した話を繰り返し。

 〈宇宙が始まってから現在までの時間は有限であるため、遠くの星の光はまだ地球にたどり着かず、私たちは近くの星だけを見ている〉、したがって夜空は星で埋め尽くされず、暗いのだ、とパラドックスを解決する。


 ……ここを読んでナチュラルに、「あ、マリーの世界は宇宙膨張してるんだな(夜空が暗いから)」と思った自分に、ツッコミを入れたくなった。


■余談12

 我々が住む地球のことも「青い星」と言うことがあるが、そもそもの星という言葉は、夜空で光っているものを指すと思う(根拠はない)。火星や木星などの「惑星」、他に「流星」や「彗星」もあるが、大半は星座の星々のような、常に同じ位置関係で光っている「恒星」だ。

 そして大昔の人々は、星(恒星)は夜空を覆うドームに貼りついており、そのドームごと回転する(だから位置関係が変わらない)と考えていたらしい。


 ……何を言いたいかと言うと。

 「地球が丸いことを知っている」のと、「地球は星である」は、直接結びつかないのではないか、ということだ。

 夜空の星々は、ただの光る点ではなく、それぞれに大きさのある丸い物体である。また、地球も唯一無二の特別な場所ではなく、夜空に多数あるものと同様の一つ(厳密には、「惑星」と「恒星」の違いはあるが)。

 という認識がない限り、地球のことも星と呼ぶようには、ならないのではないか?


 仮に、異世界が球体であり、その世界の住人が自分の足元の大地が球体であることを知っていたとして。

 夜空の星々も、一つ一つ距離の違う球体だと考えているだろうか。地球を中心に回っている、それとも地球も動いていると思っているだろうか。

(実際にどうであるかと、彼らがどう考えているかは話が別)

 それによって、「星」という言葉の使用範囲や、夜空に関する認識の描写に影響が出る気がする。


■余談12-1

 ……今、「この世界の夜空に、惑星は存在するのか」という疑問が浮かんだが。

 この世界が、太陽のような恒星の周囲を公転する惑星であるならば、住んでいる星以外の惑星も恐らく存在する。太陽系外で、恒星の周囲に複数の惑星を持つ例がいくつも発見されているので。


 古代中国では、「螢惑けいこく」(火星)がさそり座のアンタレス付近に来ると不吉、と言われていたらしい。肉眼で見える惑星は、その世界の神話や伝説に組み込まれる可能性がある。

 ――というか、それ以前に。

 我々の1週間が7日なのも、肉眼で見える惑星5つ(火水木金土)+太陽と月だ!

 この世界の暦に「週」という概念があるか、それが惑星の数と対応するか、は現時点で不明だが、検討するべきだよね。



 今回は、何も解決していない……。

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