追記11 光合成

■余談25

 「追記」の余談6で、「空は青く、丘は緑である」と書いた。

 これは正確には、「地球人が見て『青』や『緑』とは言わない色であったとしても、その世界の住人が『空の色』『草の色』だと思うものを『青』『緑』と表現することに決めた」、という意味である。


 突然だが、光(可視光線かしこうせん)、赤外線せきがいせん紫外線しがいせんなどは全て「電磁波でんじは」の仲間である。それらは何が違うかと言うと、波の一つの山から次の山(谷から谷でも可)までの長さ、「波長はちょう」が異なるのだ。

 地球上の人間が目で見ることのできる可視光線は、波長が約380 ~ 780 nmナノメートル(1 mmミリメートル = 1000 μmマイクロメートル、1 μm = 1000 nm)。可視光線と比べると、赤外線は波長がより長く、紫外線は短い。

 可視光線の中でも、我々が呼ぶところの『青』は波長450 nm付近の色であり、『緑』は500 nm付近だ。

 マリーの世界にも、波長が450 nmや500 nmである電磁波はきっと存在するが、私の定義を適用すると、全く違う波長の色が『青』『緑』と呼ばれている可能性はある。


 ところで、国立天文台のサイトで次のような記事を見た。


■余談25-1

地球とは異なる光環境における光合成:系外惑星における生命探査の指標となる波長の新たな予測

https://www.nao.ac.jp/news/science/2017/20170808-abc.html


 これ、このページだけでなく関連リンク先の図や、キッズ向け解説記事(天文台外サイト)も合わせて読むと面白い。


 現在、太陽系外での生命誕生可能な惑星の探査が進められている。

 地球上と同様の生物を想定するならば、目標とする惑星は、その惑星の太陽である恒星に近過ぎず遠過ぎず、液体の水(H2O)が存在できる距離に位置しており。

 木星や土星のようなガス惑星ではなく、地球や火星のような岩石惑星であることが望ましい。

 たとえば、2017年にNASAが発表してニュースになったのは、赤色矮星せきしょくわいせいを回る地球型惑星だ。赤色矮星は、その名のとおり赤くて小さい星。赤色矮星に照らされる惑星の空は、上記ページのイラストのように、地球よりも赤っぽい色をしているはずである。


 赤色矮星が放つ光は、可視光線よりも赤外線が多いそうだ。

 そのような恒星の周囲の惑星では、利用し易い赤外線を使って光合成する植物が育っているのではないか、と予想されていたが。

 研究によると、赤外線が強く照らす惑星であったとしても。

 水中で生まれて進化するのであれば、最初に陸上に出てくるのはやはり、可視光を使って光合成する植物になる、とのこと。


 ところで、光合成といえば葉緑素ようりょくそ(中学で習った丸暗記)。葉っぱの緑色の素。可視光を浴び、二酸化炭素を吸収して酸素を出す。

 つまり、異世界の惑星であっても。

 液体の水が存在して酸素呼吸生物が住む世界ならば、可視光で光合成できる葉緑素を持った植物が茂っているだろうから、『草は緑』でいいの!?

 ……と喜んでいたのだが。


■余談25-2

 某水族館を訪れた折、展示されていた海藻の説明で衝撃を受けた。

 海中では深度によって届く光が異なるため、緑藻類りょくそうるいだけでなく、褐藻類かっそうるい紅藻類こうそうるいも、その環境に応じて光合成しているのだそうだ。

 ……植物含め生物全般に全く詳しくないので超初心者レベルの感想を述べるが、所謂いわゆるの植物」じゃなくても光合成できる、ってことだよね。

 他の惑星で進化して最初に陸上に進出してくる植物が、緑色じゃない可能性は結局あるような……あああああ。


 日本植物学会の下記のページに載っている、色々な光合成色素の試験管写真がとても綺麗。青やピンクまである。


【第2回】海の中の赤い植物"紅藻"の謎

http://bsj.or.jp/jpn/general/research/02.php



 ……もし、マリーが酸素呼吸生物でなかったら、光合成どころか根本的に話が変わってしまう気がしないでもない。

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