追記8 お薦めカクヨム作品

■余談22

 「追記7」をアップした直後から数日間。


 もし、マリーたちがカンガルーのような有袋ゆうたい類だったら、子育て中の女性の服は一体どんな構造になっているだろうか。


 ということをかなり真剣に考えたが、マリーを有袋類にする予定はないことを思い出して終了した。そもそも、「有袋類」という言葉はどこから出てきたのか。

 疑問が発散するばかりで全く収束する気配がないのが、私の問題点である。


 突然だが、私のツボにクリティカルヒットするカクヨム作品を発見したので、紹介する。


■余談22-1

ケチャップ溝口友の会 様 『🈕🈑異世界生きもの探訪|スペシャル🈞』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884029898


 オルキアという世界で放送された、彼らから見た異世界ガブリニアの生物ドキュメンタリー番組、という体裁の作品。

 目次には、エルフ、吸血鬼、人魚といった、所謂いわゆるファンタジーでお馴染みの種族が並んでいるが、読んでみると「……コレ私の知ってるエルフと違う」と目が点になる。しかし、詳細に語られる彼らの生態は、めちゃくちゃ説得力がある。

 ちなみに、六肢系生物のくだりで「追記7」最後を思い出し、リアルに噴いた。


 我々から見て、オルキアは異世界だが。

 本作品は、オルキア住民にとっても馴染みのないガブリニア生物を紹介する、というスタンスなので、外界人から見てよくわからない点、を解説することが可能だ。


 しかし、マリーと領主は同じ世界に属している。

 マリーは、彼女が見聞きしたものを領主に報告するが、仮に空が赤かったり指が6本だったりしても、それらは二人にとっては特筆すべき内容ではない。

 その世界の住人には常識だが読者にとっては常識ではない設定の場合、上手く文中に紛れ込ませないといけないわけだ。


■余談22-2

枯堂 様 『幻想都市百景』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880780277


 行商人の日記、として綴られる異世界紀行文。「追記7」の応援コメントへの返信でも挙げたが、ほぼ私の理想の作品だ。

 ジャンルは異世界ファンタジーだが、行商人にとっては普通に自分が暮らす世界。日記なので誰かに対して何かを解説するわけでもなく、旅先で目にしたものを本人の関心にしたがって書き留めているだけ――のはずなのに、滅法面白いんだコレが。

 革製品の原料となる生物と、それを狩る猟師たちの村の暮らし。革製品の製法。革なめし職人の親方と奉公人の少年たち。

 寒村の成り立ち。目新しい野菜を使った料理法。行商人の商売の鉄則、云々。


 これだよ、こういうのやりたかったんだよ!

 マリーは領主への報告だから、時々帰ってきて直接喋るか、手紙の文面にする必要があるけれど。


■余談22-3

@47kei 様 『城壁都市案内_AfterDragon』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882888710


 かつてドラゴンと人が共存していた都市国家、「城壁都市」に関する研究。という作品。

 ドラゴンが生きていた時代をBefore Dragon期と定義。After Dragon期の研究者たちが遺跡を発掘調査し、文献を読み解く。

 A.D期から見ればB.D期の生活は謎だらけなので、彼らにとって(読者にとっても)常識ではないことは注釈が入る。

 ドラゴンの生態、都市の建造物や水利計画、城壁都市内外に住む人々の生活。

 研究なので淡々とした文面だが、B.D期の人々がいかにドラゴンと都市を愛して暮らしていたかが伝わってくる。それを研究する研究者たちの情熱も。

 「城壁都市案内」で世界観を把握した上で、都市が外敵からの防衛のために戦った「第二次侵略攻防戦」を読むと、歴史書(風)なのに泣けてくる。


■余談22-4

頻子 様 『『クロウラー』たち』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880454756


 地下で共同生活を送る、クロウラーと呼ばれる魔法使いたち。

 魔術師界で決して主流ではない彼らについて、魔術大学の講師が「クロウラー学(選択必修)」として学生たちに教える形式。つまり、読者にとって常識ではないことは適宜てきぎ、解説される。

 ガイダンスや期末試験まであるところが、本当に大学の講義っぽくて良い。


■余談22-5

ファミ通文庫公式(著:藍月 要)

『俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881980597


 一巻+アンコールと重版御礼のSSまで読了。

 高等専門学校のロボット研究部員が集団で異世界転移する、という作品。

 行き先の住民は白人系で、魔法が存在したり、ギルドの受付にお姉さんがいたり、世界観的にはお約束を踏襲しているのだが。

 ……異世界に転移したことに気づいた後の、高専生たちの反応が素晴らしい。

 本文より引用。


「違う法則の異世界だか別の銀河の異星だかわからないがどちらにせよ、俺たちがこうして生きていられるというのは都合が良すぎないだろうか? 人間の生存可能条件なんてごくごく狭い範囲だぞ」


 そうそう、そうだよね!

 私には、高専生たちのように、その場にあるもので疑問を解消するための実験道具を組み立てて検証するような能力はないが。彼らが疑問に思うポイントは、非常にいろいろ共感できる。


 欲を言えば。

 彼ら、天体現象には興味がないんだよな……空がそんな風になってたら、ちょっと日時計か何かで影の動きを観察してほしいのだが……(個人的興味)。

 まぁ、人によって関心を持つ対象は異なる、ということだ。



 マリーは高専生でも研究者でもない、一介の村娘なので。

 彼女が見聞きして報告する内容は、専門性のない、ごく普通の旅行の感想になると思われる。というか、でないと私が書けない。

 一介の村娘だが、好奇心は強い。領主が旅費や通行証などは手配してくれ、いろいろな場所を訪れ、少女の目で見た彼らの住む世界を、手紙に綴る。

 ……〝異世界あしながおじさん〟とかいう謎の言葉が脳裏に浮かぶ、今日この頃である。


 ところで、この世界の識字率はどうなっているんだ(また疑問発生)。手紙書くってことは、マリーは何の専門家でもないけれども、読み書き能力は必須だぞ。

 領主は、仮に本人が読めなくても側近に読ませればいい(ジャンヌ・ダルクの時代のフランス貴族は、読めない人が多かったはず)が、マリーの手紙の内容がほぼ私信なので、自分で読めたほうがいいよなぁ。

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