追記7 何を書きたいのか

■余談21

 昔は深く考えずにファンタジー小説を書いていたが、何本も途中で投げたり、たまには完結させたりしているうちに。


「書きたい内容があり、その効果が最大限に発揮されるような舞台を設定するのが、理想なのでは?」


 という結論に、最近到達した。あくまで理想だけれど。

 では、到達以前の私は、どのように舞台を設定し、小説を書いていたのか。


■余談21-1

「伝説の勇者の子孫である亡国の王女が、勇者が遺した剣を探して国中を旅し、最終的に魔王を倒す話を書きたい」


 要するに、ドラゴンクエストである。

 主人公が王女なので、当然、王家が存在する世界観だ。

 勇者の伝説を作らなければいけないし、魔物の設定も必要。

 手がかりを集めて国中を旅するため、ワールドマップも絶対要る。


 ……「この惑星、小っちゃすぎるんじゃ」問題で挫折(「追記4」余談15)。


■余談21-2

「魔術師が隕石召喚メテオ・ストライクしたり、エルフがいたりする世界で、世界各国から集った勇者たちに邪神復活を阻止させたい」


 要するに、『ロードス島戦記』『ロードス島伝説』である。

 邪神を崇める闇教団が存在し、闇の魔物も出没。

 魔術師養成のため、島に魔法学校を置こう(これは『ゲド戦記』の影響)。

 世界各国、王国や騎士や傭兵。国による制度や文化の違い。

 寿命が異なるエルフと人間の共存はできるのか。


 初めて真っ当に完結させた異世界ファンタジーなのだが、「敵に当たったあとのブーメランが手元に戻ってくる」という、物理的に間違った描写があるんだよねぇ……。


■余談21-3

「女剣士と男魔術師コンビ出したい。敵国の占領下にある国の元王女が遺跡破りとなり、相棒とともに古代魔法王国期の魔剣を探し、入手した剣の力で敵を追い払う」


 王女の国に攻め込む側にも、歴史的にそれなりの主張や、お家の事情がある。

 遺跡破りはアウトローな存在(盗掘)で、遺跡で得たお宝も贓品ぞうひん扱い。取引相手は盗賊ギルド。

 古代王国や魔術理論(特に、現代の技術では製作できない魔剣)についての設定も重要だ。


 ……三話で投げたんだよねコレ(「追記3」余談14、「動く鎧」)。

 亡国の王女が剣を探す話、多分ものすごく好きなのだが、私には鬼門らしい。


■余談21-4

「竜に乗って、手紙を届ける話。バトルなしで」


 紫堂恭子『辺境警備』初期みたいな、特に大事件は起きないファンタジー。

 竜が存在する世界観である必要があるので、元は竜騎士の竜という設定にする。

 郵便配達が仕事として成り立つくらい、人々が字を読み書きできねばならない。

 町に学校と図書館を作った。


 短編連作形式で、ある程度キリのいいところまで書いたが、実はまだ全体の半分(「追記5」余談16、マッチの話)。



 ……というように、深く考えていなかった頃でも、書きたい内容によって自然に、世界観にある程度の条件をつけられたわけだ。

 では、マリーの話で私は何を書きたいのか、というと。


「館から離れられない領主に頼まれて、マリーが外の世界で見聞きしてきたもの(花が咲いた、村祭りが行われたなどの日常的なこと)を、報告する話」


 要するに、身も蓋もない言い方をすれば、なのだ。

 仮に空が赤かったり、マリーの指が6本であったりしても、それを当然として、その世界で暮らす人々の生活を詳細に語ることができれば、目的が成り立ってしまうのである。なので、いつまで経っても世界観を絞ることができない。

 現時点ではっきりしているのは、


・「領主がいる」こと。

・ファンタジー的な生物はいてもよいが、人間が使える魔法や、便利な魔道具は存在しない。

・液体の水(H2O)が存在できる気候。金銀銅などの元素の顔触れは地球とほぼ同じ。

・原子も分子も知らない科学レベル。恐らくマッチは発明されていない。

・眼鏡は存在してもよいが、金持ちの持ち物。


 程度だろうか。

 あと、マリーが見聞のために他地方へ遠出するので、旅行が可能な程度には治安が保たれているだろう。恐らく、鉄道はない。徒歩か舟か、馬車?


 ……えーっと。もしや、馬がいるか否かから考えないといけないのでは。

 異世界に、四本足で、荷物を運んだり人を乗せたりする生物がいてもいいけれど、それは馬と同じ生物なのだろうか。ラクダや象かもしれないぞ。地球上の生物とは似ても似つかない場合も考えられる。

 ――六本足だったりしたらどうしよう。と突然悩み始め、頭を抱えた。哺乳ほにゅう類である保証もないよね?


 というか、下手するとマリーも哺乳類じゃないかも……卵生の可能性、否定できないよね? あああああ。

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