追記6 世界の形と重力

■余談20

 「余談」の余談2で〈地球平面説〉を例に挙げ、「この世界は球体か?」から検討するべき、と書いたが、自分が具体的に想像できるのは球体の世界だけなので、最終的には、きっとそこに落ち着くのである。

 しかし、他の形状の可能性を検討した上で潰してからでないと、「球体である」という結論に納得できない……。

 というわけで、世界はどんな形を取り得るだろうか。


■余談20-1

 球体、平面状以外と言うと、筒状? と考えたところで、「ゲームのドラゴンクエストの世界はドーナツ型」という説があるのを思い出した。

 攻略本などを見ると、長方形のマップが掲載されている。プレイ中、キャラクターがマップの左端に該当する箇所を通過すると右端から出現し、下端を通過すると上端から出現するのだ。

 この「長方形で、上と下、右と左が繋がっている」という状況を実現しようとすると、ドーナツ型になるのだという。面白い。

 が、ドーナツ型の世界には、昼夜はどのように訪れるのか。検討してみた。


 まず、マップの長方形の左右が繋がるように、円筒を作る。

 筒の上下が繋がるようにドーナツを作り、穴の真ん中に太陽を置く。

 ドーナツの内径に位置する土地は全て、天頂に太陽が存在する状態になり、正午。

 光の当たらないドーナツ外側部分を夜とし、周囲に星を配置する。

 この状態で、外径を内径へ、内径を外径へ動かすように円筒が回れば、ドーナツの上に住んでいる者にとっては「太陽が昇ってきて沈む」ように見えるのではないか?


 四季は、太陽自体が明るくなったり暗くなったり強度変動すれば、実現できそうだ。但しドーナツ世界の場合、一つの円の上にある地点は全て太陽からの距離が等しいので、地球で言うところの「緯度による気候の違い」(赤道直下は暑い、極地方は寒い)が発生しない。

 あと、内径側にいるときと外径側にいるときとで、足元の地面が伸び縮みする上に凹凸も変わってしまうので、建造物が毎日全部壊れる気がする……。


■余談20-2

 未読だけど、ラリイ・ニーヴン『リングワールド』ってSF小説があったなぁ……と思い出して検索し。

 ――太陽の周りを薄い輪が回転し、遠心力で人工重力を作り出している。

 という説明に、「そうだよ、重力が必要だよ!」と思い当たる。

 地球のような球体の惑星だと、つい当然のように重力があると考えてしまうが、他の形状の世界でも、何らかの手段で重力あるいは代替物を発生させないと、人が宙を漂ってしまうのだ。


 物と物とが引き合う万有引力は、あらゆる物同士の間に働く。人と人の間にも働いているが、弱すぎるため、日常感じることはない。

 引力の大きさは物が持つ質量に比例するので、人を足元の地面に止めておくには、月や地球のような天体クラスの質量が必要になる。


 ところで、「重力」で辞書を引いてみる。

(コトバンク https://kotobank.jp/word/重力-77493 より引用)


【大辞林 第三版】

①地球上の物体が地球から受ける力。万有引力と地球の自転による遠心力との合力。地球上の場所により多少異なり赤道付近で最小となる。

②「万有引力」に同じ。

(後略)


【ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典】

地球上の物体に作用する地球の万有引力。(中略)

地球は自転するので,実測される重力は万有引力と自転に基づく遠心力との合力であって,これを見かけの重力ということもある。(後略)


【世界大百科事典 第2版】

重力という語は宇宙論などでは万有引力のことをさすこともあるが,地球についていう場合には地球上の物体にはたらく地球の万有引力と地球自転による遠心力との合力をさす。(中略)

人工衛星のように地球の自転とは無関係な物体の運動を論ずる場合には遠心力の成分は除いて取り扱う。(後略)


 ……要するに、「重力=万有引力-遠心力」の意味で使う場合と、「重力=万有引力」の場合と、辞書には両方書いてある。

 今は、宇宙空間を漂うのではなく、その世界の地面に足を付けているので、とりあえず「重力=万有引力-遠心力」で考える。


 地球表面に立つ人は、地球の回転(自転)による遠心力(中心から遠ざかろうとする力)も受けている。重力は、「地面に引きつける万有引力から、遠ざかろうとする遠心力を引き算した力」だ。

 地球の内部には重いところや軽いところがあるので、引力の大きさは一様ではない。また、遠心力の大きさも南極・北極と赤道上とでは変わるので、重力は場所によって異なる。


 さて、球体の世界の場合、球の内部が重ければ問題ない。

 平面状世界で、人を引きつけるに足る質量を地面の下に置くためには、ペラペラの円盤ではなく、それなりの厚みが必要そうである。円柱の上の平面、になるかもしれない。

(遠心力……は、ロールペーパーみたいな回転も、バトントワリングみたいな回転も、存在しないものと信じたい。そんな面倒臭い世界、嫌だ。

 自転がなければ、この世界では「重力=万有引力」)


 リングワールドの輪には多分それほどの質量がないので、回転による遠心力で代用している。但し、遠心力は中心から遠ざかろうとする力なので、人を地面に止めるためには、その世界は曲面の内側でなければならない。

 ここで気付く。

 球の外側、ドーナツの外側、円柱の平面の上。無意識のうちに私は、〝曲面の外側の世界〟ばかり考えていたらしい。

 内側も考えに入れるなら、地底王国アガルタみたいな〈地球空洞説〉の世界もあり得る。……まぁ、〝内側の世界〟は軒並み、太陽(光源)をどうするか、という問題が発生する気がするが。


■余談20-3

 アニメ『機動戦士ガンダム』に出てくるシリンダー型のスペースコロニーって、要するに「筒状の世界」だよね。回転で人工重力を作り出し、太陽光は外から鏡で取り入れてるんだっけ?

 と考えたところで。

 ――アーサー・C・クラーク『宇宙のランデヴー』! あれも「筒状の世界」だ!

 細かいこと覚えてない! 借り物だったから、読み返したくても読み返せない!


■余談20-4

 バリントン・J・ベイリー『洞察鏡奇譚』とか、テッド・チャン『バベルの塔』とか読み返したくなったので、本棚捜索してくる。

(短篇なので、読み返したくなった理由を説明するとネタバレになる)



 いろいろ書いたけれど。

 重力の役目を果たすファンタジー的な謎の力を世界に設定してしまえば、この追記の半分くらい不要になるよね。

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