追記3 ダジャレは可能か

 今回は、マリーの世界とは違う小説の話。


■余談13

 以前、書こうとしていた異世界ファンタジーで、「『当たり前田まえだのクラッカー』『恐れ入谷いりやの鬼子母神』のようなダジャレを連発する」という人物設定を検討したことがある。

 ……当たり前だが、異世界に「前田製菓」という会社はないし、「入谷」という地名も存在しないので、このまま言わせることはできない。

 異世界転生・転移系の人物ならば、日本での記憶でダジャレを言う可能性もあるが、言っても異世界の住人たちが「前田のクラッカー」や「入谷の鬼子母神」を知らないので、ダジャレだと認識されない。

(そもそも、異世界で日本語を喋っているのだろうか……)


 では、その世界の住民ならば誰でも知っているような商品や地名を設定して、その言葉をもじったダジャレを人物に言わせればいいのではないか。

 と思ったが、今度はそれ、読者に全く通じない……。


 異世界で、マエダという会社にクラッカーを製造させ、広く知れ渡った人気商品という設定にすれば一応、読者にも登場人物にも「当たりマエダのクラッカー」がダジャレであると理解してもらえるが。

 この人物がダジャレを言うたびに、私はいちいち、そういう裏設定を考えないといけないのか?


 ……というわけで、ダジャレ連発キャラ、という設定は断念した。


■余談14

 ドイツ語名マリア・アントニアがフランスに嫁ぐと、マリー・アントワネットと呼ばれる。

 みたいなことをやりたくて、複数の国が存在する異世界ファンタジーで、A国の人物はドイツ語名、B国はロシア語名、のように設定を決めたことがある。

 ちなみに各国の名前を調べる際、私が非常にお世話になったのは、「怪しい人名事典」というサイトの対照表。現在は「さらに怪しい人名事典」へと移行している。


「さらに怪しい人名事典」

http://www2u.biglobe.ne.jp/~simone/more.htm


 ここまでは良い。

 ……アルベルトやカタリーナ(ドイツ語名)が剣と魔法の大冒険する世界で、どうしてリビング・アーマー(living armor)やスケルトン(skeleton)に遭遇するんだよ。英語だろ、それ。

 という疑問を持った瞬間、魔物を一切カタカナ表記できなくなった……。従って、この物語に登場する魔物は、「動く鎧」「骸骨兵」「泥人形」などである。三話まで書いたところで、挫折したけどな!

 同じ理由で、魔術師の使う呪文に「炎の矢フレア・アロー」「隕石召喚メテオ・ストライク」のようなルビを振ることもできなかった。


 この異世界の設定では無理だけれど、人名や地名を全て英語で統一すれば、「動く鎧リビング・アーマー」と戦ったり「隕石召喚メテオ・ストライク」したりしても大丈夫かな、とは思う。ミーノータウロスはギリシャ語だから駄目だろう。英語読みだと、ミノトールになるのだろうか?



 ――今にして思えば、だが。

 言語の伝播と変形、みたいなものに詳しい人がもし、あの小説を見たら。

 どうして大陸のこの位置がドイツ名で、どうしてロシアとフランスとイギリスとスペインがこの配置なんだ、と噴飯ものかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る