直球ど真ん中。ただし超豪速球。

ネット全盛の今、小説なり漫画なりを書いて発表できることが昔に比べ遥かに簡単になっている。

その最先端がこの「カクヨム」だったり「なろう」だったりするわけだけど、その点でラノべという分類は更に二つに極端化しつつあるように感じていた。

つまり、ライトなラノベと、ヘヴィなラノベ。

近年の作品発表の簡単さから、ライトなラノベが増えてきつつあるように思っていた。

つまり、スナック感覚で摘まめる「軽い」ラノベ。

それ自体は悪い事ではないと思う。
結局小説なんて面白ければそれが正義だ。
だからライトなラノベ、(面白ければ)いくらでも歓迎です。

だけど時にはこう、ガツンと腹の底へとクる感じの、
ヘヴィなラノベを読みたくなる。
ガチガチの設定。重苦しい文章。改行少な目。
流血が多いと尚好みだ。


この「異修羅」は、その全てを満たしてくれる作品。
やばい、読んでいてここまで楽しいのは久しぶりだ。


登場人物にそれぞれ深い設定があり、舞台にも裏があり、それでいて物語はシンプルに最強決定トーナメントとという判りやすさだ。

実のところ、ラノベでトーナメント戦ってのは定番の一つであると思う。そこらのTUEEEE系作品三つ四つ開いてみれば、大体トーナメント戦のエピソードがあることだろう。

でも。
それは物語の一部であって。
メインに据えられたものではない。

意外なことに、ネットのラノベにおいてトーナメント戦っていうのは定番のエピソードなのに、それだけを主軸に据えた作品というのは滅多に……というか、僕はこの「異修羅」が初めてだ。


シンプルに、誰が最強か。
だけど裏には、誰が勇者なのか。

最強たちの思惑と、彼らを取り巻く思惑。

読者をワクワクさせるシンプルさと、
読者をやきもきさせる謎の部分。
その二つが更に読者をワクワクさせてくる。


シンプルで、複雑で、そしてガツンと来る作品。

直球ど真ん中。ただし超豪速球。


重たい作品好みなら、絶対に読んで損は無し。

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