前へ進め、たとえ燃え尽きようとも

 城が巨神となり、龍が鎧となって、人がそれらを駆り戦う異世界。その異世界に飛ばされた少年クレハ・リクトの戦いの物語。
 城が変形した巨神同士の戦いは、壮観であり、惑星が割れてしまうほどの大スケール。身長十メートルちかい龍の鎧・竜騎兵は軽少で機動性に富み、人が乗り込むことができる。
 城が殴り合い、竜騎兵が飛び交う戦場は、古き良き戦場であり、将がおり兵卒がおり、そして騎士と姫が矛を交える絢爛豪華な世界。
 悩む主人公、民のために命を張る姫、誇り高い騎士、老将、そして狂気を孕む敵。

 城が殴り合うような異世界の設定も面白いが、異世界人の価値観や論法が現世と乖離しているのが物語に厚みを出している。せっかく異世界に転生しても、そこに住むものが、姿形が獣人なだけで、やっていることが現代日本人となんの変化もなければ、その物語は退屈なものになってしまう。攻城大陸の世界は、人、龍、神がそれぞれの想いでぶつかり合うまったくの異世界。
 とくに城、というより城塞都市そのものが人型、あるいはその他の形態に変形して戦う姿は圧巻。
 だが、ぼくは、それ以上に、作者の物を書く姿勢に胸を打たれた。
 こんな巨大な神が殴りあう描写など、未だかつて誰も成しえたことが無いにもかかわらず、それに挑み、ぶつかり、我が身を焼いて孤軍奮闘している。
 もしあなたが、小説を書くことに倦んでいるのなら、本書を読むべし。読んで、作者の熱さに打たれよ。
 

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