竜と竜が飛び回る。それもまた攻城大陸。

こんなにも血沸き肉躍るファンタジーがあったのかという驚きに満ちています。
異世界転移モノの定番を踏襲してはいるものの、現世に居た頃の記憶や生い立ちを活かし、主人公リクトの成長につなげている点を高く評価したいです。
転移を、単なる設定では終わらせていないんです。

そして壮絶な過去があればこそ、異世界での輝きも増すというもの。
竜騎兵としての才覚を見出され、ろくな訓練もないまま実戦に駆り出される様子はハラハラしました。強敵に翻弄され、何度も命の危機にさらされて……この緊迫感は他では味わえない強みですね。

さらに見どころとなる攻城戦は、圧巻の一言。
一千メートルはあろうかという巨大な城が駆動し、ガチンコでぶつかり合う……まさに決戦兵器と言うべき最終手段です。
巨体ならではの重量感を損なうことなく、真正面からどつき合う描写が、とにかく手に汗握りました。

その代わり、敏捷性と技量を活かした戦闘は竜騎兵たちが担ってくれていて、バランスもとっているという心憎さ。

最初に見せたいものを見せ、読者の期待を裏切らない。
余計な設定や舞台裏は後回しで良い。
そんな思い切りの良さが、今までにないツカミとなっています。

もちろん基本的な用語などは、序盤の戦闘にからめてさり気なく説明しているので、決して付いて行けないこともない……隙がなさすぎですよ、これは!

最後に一言、キャッチコピーが秀逸すぎます。
『城と城が殴り合う。それが、攻城大陸。』
これほど作品世界を端的に形容したコピーは、ちょっと思い浮かびません。
筆者の書きたいことがガッチリはまった、まさに氏の最高傑作と言えるでしょう。

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