スーパー織田信長大戦 ~目指せ織田信長公認二次創作~

白銀天城

第1話 ノブナガファイトの世界

 第六天魔王 織田信長は深い深い地獄の底にて思う。


『俺を扱った創作増えすぎじゃね?』


 魔王と呼ばれるのはいい。己から名乗ったものだ。

 だがRPGで本当に魔王になっていたり。子孫が宇宙に出たり。

 女体化されたり。実は生きていて外国行ったり。

 それはもう好き勝手に創り出される己自身に、なんとも言えない気持ちである。


『ならば決めてやろう。織田信長公認の二次創作を!!』


 こうして様々な世界の織田軍が一斉に集まり、最後の一軍になるまで戦い続ける世界。

 『ノブナガファイトの世界』が創り出されたのである。




「それと俺がこの世界に呼ばれたことになんの関係が?」


 戦国武将とは縁もゆかりもない高校生男子にも関わらず、自室で惰眠を貪っていたところを拉致された。

 不思議な光に包まれて、気がついたら異世界でぶっ飛んだ説明を受けている。

 随分と広い部屋だ。天守閣というやつを広くしているイメージだな。


「そう! そこなんだよ明智 勇刀くん!」


 漆黒の鎧に身を包んだ、黒髪黒目の女の子が、ズイッと顔を近づけてくる。

 気の強そうな瞳と、あどけなさの残る容姿が仰々しい鎧とミスマッチだ。

 十代後半くらいだろうか。ここまで真っ直ぐ曇りのない瞳で見つめられると困る。

 正直女の子に免疫のない俺にはどうしていいかわからない。


「君には我が織田軍の記録係をやってもらおう!!」


 『我が』って言ったよこの子。

 つまりこの子は別世界の織田信長なんだね。

 うわあ女体化武将だーすごいぞーかっこいいぞー。


「マジか……」


 現実逃避が捗るわあ。


「お館様、本当にこいつでいいの?」


「我は彼がいい。だから呼んだ。異世界から助っ人を呼ぶことは、召喚能力があって、信長にちなんでいれば可能だからね」


 さっきから畳の上でひたすらゴロゴロしているちっこい娘さんがいる。

 金髪碧眼でショートウエーブな少女。

 タレ目で、じとーっと擬音が出るくらいに見られている。

 金色か……金ピカ大好きなイメージがあるのは秀吉かな。

 信長をお館様と読んでいるし。

 仰向けに寝転んだままの金髪ちゃんが俺に向けて口を開く。


「……ヒデヨシ」


「ん? なに?」


 突然言われたので反応が遅れた。

 ひでよし、と聞こえた気がする。


「名前、ヒデヨシ」


「ああ、よろしく」


「食べる?」


 ヒデヨシがなにか手に持っている。黒い何かの塊……いやマジでなんだこれ。


「なにこれ? 戦国時代のお菓子?」


「マロングラッセ」


「マロングラッセ!? 洒落たもん食ってんな!?」


「非常食は、やっぱり、マロングラッセ」


「日持ちしねえだろそれ」


「満足した、やっぱりあげない」


 それだけ言って天井を見つめる作業に戻るヒデヨシ。覚えたぜヒデヨシよ。

 今のとこ俺の女体化武将当てクイズは的中率十割だ。


「他の武将には後で会わせてあげよう。ちょっと今立て込んでてね」


「その人達は何をしているん……です?」


 よく考えたら年下なのか年上なのかわからない。今更敬語になる。


「君は仲間になるんだ。敬語はいらないさ。我も勇刀と呼ばせてもらうよ」


「ああ、いいよ。よろしく」


 意外にフレンドリーだ。殺伐とした空気がなくて助かっているよ。


「何をしているかだが、城に結界を張ってもらっている。そろそろ降りそうだからね」


「結界とか張れるのか……降りそうって、雨とか?」


「いや、デブリが」


「デブリが!?」


 スペースデブリのことですか?

 結界あるらしいから、陰陽術バトルだと思ってたけど宇宙行ったかー。


「今は宇宙海賊ノーブ・オダの船と」


「銀河パトロールNOBUNAGAの宇宙船が戦闘中」


 補足してくれるノブナガとヒデヨシ。


「どうコメントするのが正解なんだよ」


「落ち着くんだ勇刀。今君が考えることじゃない」


 できれば金輪際考えたくないです。

 本当にとんでもない世界に来たんだなあ。


「イエヤスの結界は上の上だよ。最高だ。恐れることはない」


「家康って織田軍でいいのか?」


「よい、我が織田軍は時系列で言えば織田徳川同盟を結んでいる」


 時系列とか知ってるんですね。同盟があれば後は時代によりけりらしい。


「君にとって絶対に悪い話ではないよ。ウチの記録係は最高だよ」


「記録係ということは、みんなの身体測定なんかも、できてしまう」


「なん……だ……と……」


 落ち着け。落ち着くんだ俺。ここで女に流されてウソでしたーはキツイ。

 そもそもここで承諾すれば、俺にエロガキという不名誉な称号が付き纏う。


「エロスに、負けて、はやく」


 ヒデヨシに嫌な催促をされる。絶対、エロスなんかに負けたりしない!


「そもそも、何で俺にそんな事をさせてくれるんだ?」


「君は元の世界では一切何の特技もない普通の男の子だ。でも異世界に行くと全ての因果が集中する」


 難しそうな話始まったよこれ。


「そうすると平行世界の勇刀は存在しなくなって一人に収束する。そこからなんやかんやあって唯一無二の能力が手に入るのだ!」


「大切そうなとこはしょった!?」


「ハッピーエンド一直線、モテモテ、ハーレム野郎」


「それが君の力だ」


「まったくピンとこないです」


 説明が説明になってない気がする。


「ふむ、では君に逃げ道をあげよう」


 いたずらっ子の目で俺を見つめるノブナガ。

 逃げ道とかはっきり言わないで下さい。


「この世界に呼ばれた以上、どこかの織田軍に入らなければならない。しかし!」


 ズビシっと俺を指さして、さらに演説は続く。


「なかには史実に近い、全員男の織田軍もある。そしてそこに入ろうものなら……」


「も、ものなら?」


「ほんの少しの粗相で首をはねられるぞ」


「しかも、ガッツリ衆道を嗜んでいたり、するかもしれない」


「ここで働かせて頂きとうございまする」


 誠心誠意土下座である。

 衆道とは男同士の肉体的なラブをやっちゃうアレである。

 そんな事されたうえに首飛ばされたら、無念すぎて悪霊一直線だよ。


「では君は今日から織田軍の武将記録係だ。よろしく頼むよ勇刀」


「よろしく、勇刀」


「よろしくお願いします」


 こうして織田軍に入ったけど何をすればいいんだろう。

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