第13話 完結と新たな始まり

 打ち切りを目的とした黒の軍勢を打ち破るべく、完全武装して挑むノブナガ軍。

 いつもふざけているメンバーも、今回だけは真剣な面持ちだ。


「打ち切りには未来はない。しかし、完結すれば続編の可能性は残る」


「我らの力を合わせ、ノブナガファイトを一度完結させる!」


「そうすりゃ、この世界でお前らと一緒にいられるんだな?」


「確約はできません。しかし、信長キャラに残された道はもうそれしか」


「ならやろう。俺は……まだまだお前らと一緒にいたいんだ! 天守閣でバカやっていた時間は……悔しいが楽しかったよ。だから、だから俺は戦う!」


「総員戦闘配置! 目標、打ち切り軍! 全軍突撃いいいぃぃぃ!!」


「おおおおぉぉぉぉ!!」


 こうして天下分け目の大合戦が始まった。


「柴田勝家! 戦場にて一番槍仕る!!」


「蘭も参ります!」


 当然オダン一派も参加している。

 柴田と蘭丸の実力は本物で、打ち切り軍の雑兵がそれほど強くないこともあってか、戦況は優勢であった。


「目標は大きくて黒い武者だ。あれさえ倒せば崩せる!」


「打ち切りなど、認めません! 勇刀様!」


「どうした?」


「撫でてください」


「……はあ?」


 いきなりイエヤスからのお願いである。


「ここは私とオダン一味で切り開きます。一直線に進んでください」


「確かにそういう作戦だけど……イエヤスを残していくのは」


「ま~かせな明智くん。お詫びも兼ねて、イエヤスさんは必ず守る。なんなら一人だけ逃してやるさ」


「大丈夫です。正義は負けません。そこに勇刀様の性技が加われば、私は負けません!」


 いつも一言余計だな。まあいいさ。俺にできることがあるならしてあげたい。

 イエヤスを抱きしめ、ゆっくり頭を撫でてやる。


「ごめんな。俺がもっと強かったら、こんな力に頼ることもないのに」


「いいえ、むしろこれが興奮します。なぜ撫でる止まりなのか疑問で不満です」


 状況考えてください。なぜいつも性に積極的ですか。


「それは戦場では……人目もあるので」


「つまり全てが終わったら解禁ですね」


「んなこと言ってません!」


「解禁、するなら、がんばれる」


「よし、三人とも生き残って解禁後の勇刀を楽しもう!」


「いらんこと言うな!」


 こいつら悲壮感とかないのか。ないんだろうな。必ず勝つと信じている。


「ありがとうございます。勇刀様のため、勝ちます! トクガワ流奥義、氷結連牙撃!!」


 イエヤスの生み出した氷の柱が、敵を貫き道を作る。

 無数の氷が敵を分断している今がチャンスだ。


「こっちは任せな明智くん」


「行ってらっしゃい勇刀様」


「行ってくる! 癪だがイエヤスを頼んだぞ!」


「おう! 男の約束だぜ!」


 ノブナガ軍と一緒に更に敵陣不覚へと切り込む。

 俺も変身して微力ながら応戦する。


「そろそろ数が増えてきたね」


「本陣、だから、仕方ない」


「この奥があのでかい鎧武者のいる場所だな」


「ああ、だがこれは厳しい……どうやら囲まれたようだねえ」


 敵の数が多すぎだ。これじゃあ敵の処理だけで疲労がたまる。


「全軍、撃てえええぇぇ!」


 空から声がすると同時に、敵軍に銃弾の雨が降る。


「助けに来たわよ!」


 足に筒状の機会を付けた女性だけの空軍がいた。


「受け取って!」


 信長が投げてきた通信機をキャッチし、スイッチを入れる。


『間に合ったようだね』


「その声、提督さん?」


『ああ、なにやらピンチみたいだね。助けに来たよ。こちらは数が揃っている。しかも空から攻撃できる。きっと彼女達は役に立つ』


「そんなわけでストライクオダッチーズ、特別任務遂行します!」


 これは嬉しい誤算だ。空中からの射撃はロケットランチャーも含まれるため、かなりの敵が減る。


「助かったよ。援護感謝する」


「ノブナガのおかげで、提督と新たなステップに進めたわ。これはそのおかえしよ」


「なんだそりゃ?」


『気をつけろ明智くん。女の子に好かれすぎると、死ぬぞ」


「死ぬ!? なにやったんですか!?」


 心なしか提督さんの声が沈んでいる。っていうか疲れている気がするな。


『私は何もしていないさ』


「私らが欲望に素直になったのよ!」


『君はまだヒロインが三人だろう?』


「え、ええまあ」


『こっちはヒロインじゃなく戦力のつもりでほぼ平等に気にかけ、数を増やした。仲間だと思っていたし、家族のようなものだとも思っていたよ。絆を深めていった』


「それが大間違いだったのよ。ただそれだけ」


『ローテーションは早めに決めておいたほうがいい。殺到されると途中から感覚がなくなる』


「何の話ですか!?」


 なんだよ超怖いよ。なにやったんだよこいつら。


「じゃあ、まず、ヒデヨシを、撫でる」


「何故に?」


「お館様を、確実に、ボスまで、届けたい」


 ここでヒデヨシも離脱していいのだろうか。

 俺とノブナガだけで勝つ……勝てるのか?


「勇刀は、勝つよ」


「なんで言い切れる?」


「親方様が、いる。勇刀も、強い」


「いいからさっさと撫でちゃいなさいよ。素直になっちゃった方がお得よ」


『うむ、自分の心と向き合うのだ』


 なんかやたら後押しされる。勢いに任せてヒデヨシを抱きしめた。

 顔がちょうど俺の胸のあたりに来る。


「勇刀は、いい匂い」


「そうか?」


「勇刀の暖かさが、好き。だから、もっと、一緒にいるために、勝つ」


 ヒデヨシが黄金の輝きを放つ。オダンドもパワーアップしている気がした。


「よし、行って来い。俺達も勝つ」


「また明日もお菓子を用意しておくれよ」


「任された。トヨトミ流究極奥義、黄金爆砕波」


 分身したヒデヨシが一斉に金色のビームを放つ。

 集ったザコ敵が一掃されて道ができる。


「退路はこっちで確保しておくわ。思う存分やっちゃいなさい!」


「すまない! 行ってくるぜ!」


 そして最奥で待ち構えていたのは、ザコ敵よりもトゲトゲしくてデカい鎧を着た黒いオーラを放つもの。


「来たか、信長の魂を受け継ぐ存在よ」


「お前がボスだな」


「いかにも。ワシこそ打ち切り軍筆頭。武者信長」


「ほほう、そちらも信長派生キャラだったのかい」


「信長を題材とした作品は増えすぎた。信長の権威を落とさぬためにも、ワシが狩らねばならぬ」


「誰も頼んじゃいないぜ」


「それがどうした。信長としてダラダラと日常を送る貴様らに、合戦と戦国の厳しさを叩き込んでやるわ!」


 巨大な金棒をもった武者長が立ち上がる。

 凄まじい威圧感だ。こいつは強敵だな。


「いくよ勇刀。勝ってこの世界を続けていくんだ」


「ああ、俺達の世界は終わらない!」


「認めん! 歴史上こんな信長はありえん!」


 変身した俺と、ノブナガの剣なら対抗できるはず。

 大振りな攻撃をかわし、なんとか一撃入れてやる。


「ノブダーキイイィィィック!!」


「チェストオオォォ!!」


「ぬぐう!? 何故だ、乱造される信長キャラの分際で……ワシに歯向かうなど……認めんぞ!」


「お前に認められる必要はない!」


「どんなキャラが増えようが、それは自由。お前一人の勝手な価値観で、不要かどうか判断する権利はない!!」


「ぬかせ小童どもがあぁぁ!!」


 口から黒い炎を吐き出す武者長。

 ギリギリで回避するも、そこを狙われ、横薙ぎに振るわれた棍棒を食らってしまう。


「ぐはあ!?」


「勇刀!?」


「グハハハハハ! 雑な信長キャラの力はその程度か!」


「だいたいお前も武者信長ってことは信長キャラだろ! そんなナリしてふざけんなよ!」


「ワシはいい。間違いを正すための力だ」


「それをひとりよがりというのだよ!」


 秘剣を使い応戦するノブナガ。しかし相手は巨大な鎧。

 ダメージは与えても、決定打が与えられない。

 鍔迫り合いになり、宙に浮いたノブナガへ追撃の火炎が迫る。


「最大の火炎ブレスを受けてみるがいい!!」


「ノブナガ!!」


 自分でも気付かぬうちに、自然と体が動いていた。

 考えるより先に、ノブナガの前に立ち、炎を受け止める。


「勇刀!? 離れろ! きみまで燃えてしまうぞ!」


「いやだ!」


「フハハハハハ! これで正しい歴史が紡がれる。後悔しながら地獄に落ちるがいい!」


「うるせえ! 俺達は……俺達は間違っちゃいない!!」


 こいつらといた日々を、こんなやつに否定される筋合いなんてない。

 全身の力を両腕に込め、炎を振り払ってかき消した。


「間違っているかどうかなんてお前の主観だろうが! それにな、間違っていても……誰かが笑顔になる! あの生活で救われたやつもいる! 俺だってそうだ! こいつらと一緒に天守閣で菓子食って、変なやつと戦って、鍋やったりして、そんな生活が幸せだった!」


「勇刀……」


「俺はこいつらが! ノブナガが、ヒデヨシが、イエヤスが、この世界が好きなんだ! てめえが認めようが認めまいが、俺が好きな世界を、そんな理由で壊させねえ!!」


「その体でよく吠えたものよ。だか次のブレスに耐えられるか?」


「貴様に次などない!」


「なにい!?」


 後ろから聞こえるバイクの音。天高く飛び上がったその姿は。


「ノブダーパアアアァァァンチ!!」


「ぐわああぁぁ!!」


 武者長を殴り飛ばし、俺達の前に降り立つ黒いスーツのその姿は。


「仮面ノブダー一号!」


「待たせたな。ブレイブ!」


「どうして……」


「自由と平和を脅かす悪がいる。それ以外に理由が必要かい?」


「ははっ! かっこいいぜ一号!」


 ヒーローってのはこうでなくっちゃあな。

 俺もまだまだやれる。負けてらんねえ。


「立てるか、ノブナガ」


「ああ、勝って帰ると約束したからね」


「許さんぞ貴様らああぁぁ!!」


 やはり死んでいないか。頑丈だな落ち武者野郎。


「ノブナガ、ブレイブ、おれが時間を稼ぐ」


「いつものだね?」


「みたいだな」


「ゆくぞ武者信長! この仮面ノブダーが相手だ! トオゥ!!」


 ノブダーと武者長の戦いは激しく、土煙が舞う。

 その中で、はぐれないようにしっかりと抱きしめ合う俺とノブナガ。


「なあノブナガ」


「なんだい勇刀」


「俺はさ、この世界に来て良かったと思っている。みんなに会えて、ハチャメチャな毎日が気に入っていた」


「我もさ。勇刀といた時間は幸せだった。四人でいる時間が当たり前になって。それに気付いた時、すごく幸せだったよ」


「そうか。ならその幸せがずっと続くように、俺からのおまじないだ」


 仮面の部分だけ変身を解除して、ノブナガを引き寄せる。

 はじめての経験だったけど、まあなんだ、照れるもんだな。好きな人の唇を奪うってのはさ。


「勝とう、ノブナガ」


「勝ったら、みんなで続きだね」


「考えておくよ」


「ふっ、約束だよ」


 そこで全ての土煙を払うように、武者長が棍棒を振るう。


「全てを……全てを滅してやる! ワシの気に入らんものは全てだ!」


「そうは……させん!」


 ノブナガの秘剣を二人で持つ。自分でも不思議なくらいに、体の奥から力が湧き上がる。


「これは、燃え上がる愛の炎。今の我らに敵はなし!」


「ワシの野望を……阻むなああぁぁ!!」


「ノブダーキイイィィィック!!」


 一号の渾身のキックが棍棒を砕いた。


「今だ! ノブナガ! ブレイブ!」


「サンキュー一号!」


「我らの愛の結晶! 第七天魔神剣!!」


 天に向けた剣は、輝く光を放ち、雲を突き破る巨大な剣となった。


「バカな……こんな力が……あっていいはずが……」


「いっけえええええぇぇぇぇ!!」


「終わりだああああぁぁぁ!!」


「こんな……バカナアアアァァァァ!!」


 振り下ろされた光の剣に為す術もなく、黒き鎧とともに武者長は消え去った。

 遠目に見える敵軍が消滅していくのが見える。


「終わった……んだよな?」


「ああ……我らは勝ったんだ」


「見事だった。愛の勝利というところか」


「ありがとう一号。助けに来てくれなかったらやばかったぜ」


「なに、仲間のピンチなんだ。当然のことをしたまでさ」


 こうして、俺達の戦いは終わった。


『大儀であった』


 いきなり空から声がした。威圧感はあるが、武者長のような嫌悪感はない。


『打ち切り軍との戦、誠に見事であった』


「まさか……本物の織田信長!!」


『我が名は第六天魔王、織田信長なり』


 どうやら本当に本家信長らしい。威厳のある男性の声だ。

 カリスマ性というのだろうか。本家と言われたら納得する声だな。


『大儀であった。願いを言え。どんな願いでも一つだけ叶えてやろう』


「なんでも?」


『ノブナガファイトは続けよ。権利があるのはノブナガと明智勇刀のみだ。二人で一つの願いを言うがよい』


「ノブナガ、ちょっと叶えたいことがある」


「我もさ。それでいってみようか」


 相談はそれで終わり。気持ちが一つになっているということだろう。


「認めて欲しい」


 俺達の願いは一緒だった。完全に声が重なった。


「ノブナガ派生キャラは山ほどいる。今も増え続けている」


「けれど、それは織田信長の人生が劇的で、そのカリスマ性に魅せられたからだ」


「人の心に残る偉大な歴史。日本史に残る壮絶な生き様に、みんな惹きつけられるんだ。言ってみれば、織田信長が好きなのさ」


「だから、認めて欲しい。そんな織田信長から生まれた作品群を。信長を愛するがゆえに生まれる派生キャラを」


「ノブナガファイトは続ける。けど、公認キャラの中での一番を決める。全ての作品を愛し、楽しみたいんだ」


 これが俺達の結論だ。この世界の生活は楽しくて、沢山の人に出会って、助けられた。だから、もっともっと信長キャラを見てみたい。


『容易いことだ。願いは叶えられた。我が公認の派生キャラどもよ。これからもよいファイトを期待する』


 そして声も、威圧感も消えた。どうやったのかは知らないけれど、これで全員公認キャラだ。


「願い、俺達だけで決めてよかったのかな?」


「いいのさ。我らへのご褒美だ。勇刀との結婚式とかちょっと考えたけれどね」


「気が早いやつだ」


「お、否定しないねえ」


「その結婚ってさ……」


「ヒデヨシとイエヤスも入れてだよ」


「そっか。なら前向きに検討しよう」


 みんなが走ってくるのが見える。どうやら全員無事だ。


「勇刀様! お館様!」


「よかった、二人とも、無事だ」


「そっちも無事でよかったよ」


 再会を喜ぶ。それも勝者の特権だろう。

 抱きついてくる二人を受け止めた。


「さあさあみんな、勝利を祝って大宴会だ!!」


 俺はこれからも、この世界で生きていこう。

 大好きな人達と一緒に、毎日を騒がしく生きていく。

 それは幸せなことなんだと、心からそう思う。


 完。

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スーパー織田信長大戦 ~目指せ織田信長公認二次創作~ 白銀天城 @riyoudekimasenngaoosugiru

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