第5話 オーダバトラー
「ヒマだねえ。そこらへんのラブホテルっぽい織田城でも占領するかい?」
「するなよ。してどうする?」
いつもの日常。天守閣でだーらだらしている俺とノブナガ。
会話がバカっぽいのは頭をカラッポにしているからだ。
「勇刀専用だよ。気に入った女の子を入れておく」
「絶対にいらん! 俺が変態みたいだろうが!」
「変態じゃない、おさわりマン」
「流行らそうとすんな!」
ごろごろなんてレベルじゃないヒデヨシにそう言われる。
こいつ布団敷いてやがる。しかも枕が三つあるのはどういうことだ。
「たいやき、食べる?」
「ふむ、今日はたいやきか。ヒデヨシのおやつは多彩だねえ」
「おぉ、和風だ……一個貰うよ。ありがとう」
「中身はカスタード」
「そこはあんこでいいんじゃね?」
まあ美味しかったので感謝しよう。ちょうど小腹が空いていた。
しっぽまでちゃんとクリームが詰まっている。やるなヒデヨシ。
『見つけたぞ! 悪しき織田信長!』
妙に響く声が外からした。
ここは天守閣。つまり最上階だぞ。
『いざ尋常に勝負!』
外を見た俺達の前に、二足歩行の空飛ぶロボがやってきた。
その風で天守閣内の物が飛ぶ。掃除どうするんだよこれ。
「ヒデヨシの、ふとんが、ふっとん……」
「言うな! 言ったら負けだぞ!!」
『フハハハハハハハ! どうした? 布団がふっとんで声も出ないか!!』
「言っちゃった!? 誰だか知らないけど言っちゃったよ!?」
あの白くて昆虫っぽいロボから声がする。スピーカーを通した声だ。
「せめて名を名乗りたまえ。無礼であろう?」
『オレは織田室 礼。悪しきオーダ力を感知してやって来た!』
「おーだちからってなんだよ!?」
『悪いがとてもいやらしくハレンチな波動を感じた。そこへ布団と三つの枕……断じて許されることではない! このオーダバトラーで成敗する!』
「誤解だよ。完全に誤解なんで帰ってもらえますかね? 掃除しないといけないんで」
帰って欲しい。巨大ロボに勝てる力なんて無い。このままじゃ負ける。
「さっそくおさわりマンの本領発揮といこうじゃないか!」
「おさわりマンはやめて!?」
ノブナガが俺に密着してくる。まだ触ることに抵抗があるんですよ。
「急いでくれたまえ。いくら我でも巨大ロボに対抗するにはこれしかない」
そうか、ノブナガも少し震えている。そうだよな。怖くないはずがない。
「わかった。俺に任せろ!!」
ノブナガをぎゅっと抱きしめた。恐怖をやわらげることを優先しよう。
俺は男だ。真の男とは、震える女の子を包み込めるものだ。
「勇刀、もっとおしりを、こねくりまわすように」
「台無しだよ!?」
「我の臀部……撫でたければ撫でるがいい!!」
「うっさいわ! お前もそっち側かよ!」
『なんとハレンチな!?』
「俺もそう思うよ」
本当にそう思う。ごめんねマジで。こんな織田軍でごめんなさい。
鎧とスカートの奥に手をつっこんで下着越しに尻を撫でる。
すべすべで柔らかい。なんだこの暖かく全てを肯定してくれるような手触りは。
「よし、これで我は閃いた!」
どうやら勝ちパターンに入ったっぽい。いやらしく尻を撫でた成果が出たな。
「これも勇刀のおかげだよ。おかげで、この城の地下に無敵ロボが保管されていることに気がつけた」
「どういうこと!?」
「さあ、若い力を燃やす時! いざ出動だ!」
壁の掛け軸をはがすと、そこには三つの穴。その一つにノブナガが飛び込んだ。
「昨日までこんなんなかっただろ!?」
「急いで、勇刀隊員」
「隊員!? ええい行くしかないか!!」
意を決して飛び込んだ先は、なんか滑り台っぽくなっていた。
「おおぉぉ……ロボットアニメで見たことあるぞこれ!」
ちょっとテンション上がる。仕方ないだろ。こちとら男の子だよ。
すとん、と席に落とされる。ここは見るからに操縦席だ。
「遅いぞ勇刀」
俺の左前にノブナガが座っている。そしてもう一つ、俺の左横に席がある。
三人操縦なんだろう。つまり。
「到着。起動スイッチオン」
やはりヒデヨシが座ることとなった。
「三神合体! ゴー! オダエリオン!」
近くの湖がぱかっと割れ、俺達の乗る真っ黒い鎧武者みたいなロボが登場だ。
「合体って……これ一体のロボじゃないのか?」
「男一人と、女二人、合体するには、ちょうどいい広さの室内」
「そういう意味なの!?」
「我はどっちの意味でも構わないよ」
「さ、戦闘準備完了だ。待たせたな!」
強引に戦闘開始。下ネタは乱発すると飽きる。
『やってやる。やってやるぞ! オーダライフルをくらえ!!』
敵ロボが手にもったライフルをぶっ放してきた。
「遅い!」
ノブナガの操縦技術により軽々と避ける。なぜ操縦できるんですかね。
『外した!? やつもオーダ力を使えるのか!?』
「ここが今日の桶狭間! 無限織田パンチ!」
目にもとまらぬ拳のラッシュで相手を追い詰める。
前回のオダオダラッシュを根に持っているんだろうか。
『うわああぁ!? パ、パワーが違いすぎる!?』
なんか急に雑魚敵っぽくなったなあいつ。
「オダエリオンは無限の力だ!」
「目標を、センターに入れて、スイッチ」
オダエリオンの目から熱光線が発射され、相手の装甲を溶かす。
「違うリオンだそれ!?」
「よし、このまま決める! 勇刀! おさわりタイムだ!」
「どうして!?」
「おさわりすることで、きっと、新しい武装で、とどめがさせる」
「意味がわからん!」
「おさわりから、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ」
「だからそれ違うリオンだよ!」
ここで俺的ファインプレイ。ノブナガの頭を撫でる。
別に性的に触らなくてもいける気がするのさ。
「ん……これはこれで……気持ちのいいものだね」
『いくらハレンチを繰り返したとて、このオレを倒すことはできぬう!!』
「どうかな? やってみなくちゃ、わからないよ!」
全速力で突進し、がっちりと抱きついたオダエリオン。
「脱出!!」
コックピットだけがポーンと飛び出し、天守閣に戻った。
「脱出してどうする!?」
「これで我らの勝ちだよ」
「どういうことだ?」
「精神、ポイントを、10使用して、自爆」
「…………なに?」
突然光り輝き大爆発するオダエリオン。とてつもない威力だ。
爆炎が巻き上がっている。あそこにいたら死んでいたな。
『ばああああかあああああなあああぁぁぁ!?』
逃れることのできない自爆で消し飛んだオーダバトラー。
これでまた、織田信長派生キャラを倒したのであった。
「勇刀、勇刀」
「なんだヒデヨシ」
「ヒデヨシも、撫でるべき」
「なんでだよ?」
「その質問はどうなんだい勇刀?」
よくわからんが、ヒデヨシも頑張っていたし、撫でてやるか。
こういうのは不思議な気持ちだけれど、これからも一緒にいたら慣れるのかね。
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