第2話 宇宙忍者ノーブズ

 ノブナガファイトの世界で生きていくと決めた直後。

 俺の主であらせられるノブナガにより、俺の能力の説明が始まった。


「それじゃあ、能力について説明するよ」


「いきなりわかるものか?」


 特殊能力とか超欲しいじゃないか。

 中高生男子の憧れだよ。絶対に届かない憧れだよ。


「わかるさ、これが気に入って呼んだからね」


 これは期待できる。織田軍に好かれた能力だからな。

 どんな能力でも使えないものではないはずだ。


「君の能力は、異世界の女性に触れ続けて、お互いに興奮するとものすごい奇跡が起きる能力だ!!」


「えぇ………………」


「すごく、卑猥だね、勇刀っぽい」


「褒めてないよな?」


 どう反応すればいいんだよこれは。


「まあ実践あるのみだね。ここはまず我が確かめてあげようじゃないか」


「お館様に、譲る、敵倒しておく」


「敵?」


「ほう、気付いておったか」


 天井から突然降ってくる4つの影。

 ノブナガがショットガンで影を阻むと、少し離れたところに着地するそいつら。


「拙者はハン・オブ・ゾウ」


「拙者はコターロウ」


「拙者はゴ・エーモン」


「そしてリーダーの拙者がノーブ・オダ」


 全員が機械的な鎧を身に纏っている。

 鎧というか宇宙服のようなSFで出てくるスーツのようだ。


「われら! 宇宙の忍者4人組!!」


「宇宙忍者ノーブズ!!」


 びしっとポーズを決める宇宙の忍者4人組。

 全身真っ黒なアーマーなため区別がつかない。


「宇宙海賊の残党か。よりによって脱出ポッドでウチの真上に落ちるとはね」


「これもまた天命、ここで貴様らの首をとる!」


 決めポーズのまま宣言するノーブさん? 誰が誰だっけな。


「ノーブズのリーダーであるわしは体が自在に伸びる特殊能力を持っておる」


「他の三人は、バリアー・炎・岩、中々面白かったよ」


 ヒデヨシの足元にはノーブズとやらの三人が倒れている。

 ちびっこのくせに強いぞヒデヨシ。


「バカなっ!? ワシの仲間がこうもあっさりと。おのれ許さん!」


「許さなかったら、どうするの?」


「貴様ら全員、仲間のいる地獄に送ってくれるわ!」


 ノーブが右腕をぐいーんと後ろに伸ばす。どっかで見た気がする。デジャヴかな?


「食らうがいい! ノブノブの火縄銃!!」


 後ろに伸ばした腕を勢いをつけて飛ばしてくる。


「おいあいつダメだろ!?」


「心配するな。この程度の攻撃でやられる我ではないよ」


「まだまだあ! ノブノブのガトリング!!」


「やられるとかじゃなくて権利的にダメだろあいつ!?」


「まずいな、こいつ強いじゃないか」


 ノブノブのガトリングがかなり強い。じりじりと壁際に追いつめられるノブナガ。


「はっはっは! このノーブの実力思い知ったか!! さらにこのバッチリした魔法のリングでワシのギアがセカンド、サードと上がっていく!」


「まずい、露骨、すぎる」


「よーし百速まで仕上がったわい!! ワシの脳細胞がトップギアじゃ!!」


「私が時間を稼ぐ。鳴くのなら、殺してしまえ、ノーブ・オダ」


「それノブナガのヤツじゃなかったか」


「お館様、はやく、乳繰り合って」


「すまない。勇刀! さあ我の体をいやらしく弄るんだ! エロ同人みたいに!」


「こんなときに何言ってんだ!?」


「説明しただろう! 君は女体を貪るためにこの世界に呼ばれたんだ!」


「直視したくない現実だ!?」


 鎧を脱いで下着姿になるノブナガ。意外にも白だ。てっきり黒とかだと思ったのに。

 恥じらいで身体がほんのり朱に染まる姿は可愛いけど、可愛いけども。

 こんな状況で流されるまま女体を撫でるなんて納得いかない。

 相手の気持ちも無視して仕方が無いからなんて理由で撫でていいわけがない!


「貴様ら! 戦闘中に何をしている!! ハレンチな!!」


「オッケイもっと言ってやって!」


「どっちの味方なんだ君は!!」


「はやく、揉め、はやく」


 ヒデヨシに背中をグイグイ押されてノブナガと密着する。


「うおおわ、ごめん!?」


「いいんだ。正直タイプだし。君が初めてでよかったよ」


「初めて!? いやでもこんな」


 まだ決心がつかない。まずいなこれは。ヒデヨシもノーブの体術に押され気味だ。

 あいつなんでギャグキャラのクセに強いんだよ。腐っても織田信長ってことか。


「よし、やるぞ」


「ああ、優しく……じゃダメか。好きにまさぐるといい」


 まず出来る限り優しく抱き締める。

 寒いのか怖いのかわからないけど、小刻みに震えている。

 初めてらしいからな。行為が最低でも優しくしたい。俺の無駄な吟詩だ。

 抱きしめているとわかる。俺の鼓動よりもノブナガの鼓動のほうがずっと早い。


「ふむ、君は暖かいな。やはり君が初めてでよかった」


「もっと、全体をこね回すように、時に優しく、撫でる」


「外野うっさい!! そんなことできるか!!」


 やがてノブナガの体に光が満ちる。

 長かった。抱き合っていたほんの数分が何時間にも感じた。


「ありがとう。もう負ける気がしないよ」


「つよく、なってる、すごい」


「茶番は終わりか? ならばその男もろとも冥府へ逝くがよい!!」


「悪いね。今の我は無敵さ」


 ノーブの拳に自分の拳を合わせていくノブナガ。撃ち負けたのはノーブの拳だった。


「一瞬でここまでのパワーアップができるとは。貴様! その力は何だ!」


「愛の力さ。勇刀の優しさが我に無限の力をくれる。君の流儀に合わせてあげよう。ノーブくん」


 ノブナガの拳が光って唸る。全てを砕けと渦巻き叫ぶ。


「これが恋する乙女の力だ! ノブナガの! 超! 火縄銃!!」


 拳から溢れる光の奔流はノーブを巻き込み城の外まで飛んでいった。


「これにて一件落着!!」


 どうでもいいけど下着姿のまんまだぞ。


「認めよう、勇刀はすごい、すごいエロい」


「エロくない!! それだとただエロいだけみたいだろ!!」


「気にするな勇刀! これから身体測定とかで嫌でもエロイベント目白押しだぞ! 自然とエロくなっていくさ!」


「なってたまるかああぁぁぁ!!」


 俺は性欲第一のサルとは違うんだ。

 人間として、文明人として、もっと大事なもののために生きる。


「そういやなんで身体測定とかやるんだよ? やるとしても俺がやる必要が無いだろ?」


「君は記録係だよ? 君は全裸の我等を隅々まで図って記録する義務がある!」


「全裸になる必要はない! まずノブナガは服を着ろ!!」


「めんどうだからこのまま全員の身体測定をしてしまおう。ヒデヨシも脱いでしまえ」


 ツッコミを入れる前に二人とも下着姿になる。展開が早いな。


「黒……だと……?」


 意外にもヒデヨシの下着が上下黒だ。上の必要はあるのだろうか。


「子供体型だから、白というのは、安直、意表をつく」


「誰のだよ。別に下着くらい好きなの履けばいいだろ」


「うむ、裸に近くなると気分もサッパリすっきり爽快だな。見たまえ、天守閣からのこの景色を!」


「行動に脈絡ねえな! 下着で外に出るんじゃない!!」


 ここは城の最上階。殿様がいるに相応しい場所には最高の景色が相応しい。


「コンクリートにも排気ガスにも汚染されていない景色はどうだい?」


「おぉ…………これはすげえ……」


 城下町とそこから更に広がる世界は山も川も空も綺麗だ。

 これが自然の美しさか。なるほど、見応えがある。


「あのちょっと遠くにあるのが織田信長の城だよ」


「なんで二つあるんだよ!!」


「その奥が、キャッスル・オブ・ノブナガ」


「つまり信長の城なんだな!!」


「ノブナガファイトの世界だからな。山ほどある。堪能するがよい」


 沢山ある信長の創作世界が一つになったんだっけか。

 これは予想外だ。景観ぶち壊しだよ。

 キャッスル・オブ・ノブナガとやらがどう見てもラブホテルのようなお城だ。


「あの城もいずれ我々のものになる」


「絶対住みたくないわ」


「特にあのラブホテルのようなお城は男だけで住んで欲しい」


「地獄だ!?」


「門番は二人にして、毎回交代の時にご休憩のランプが点灯するようにしてやるぞ」


「いかがわしすぎる!? まんまラブホじゃねえか!!」


「戦国時代は、衆道が、スタンダード」


「そうじゃない人の気持ち考えて!!」


 うわぁ……できる限りの知略を使って潰そう。

 あの城はさっきの超火縄銃みたいな技でぶっ壊すように誘導しなくっちゃ。

 今です! とかフハハハハハ馬鹿め! とか言う練習しなくっちゃ。


「さっきからボケにばかりツッコんでるけど、我等にはツッコみたくならないのかい?」


「何をだよ!」


「ナニを、勇刀の、ちっちゃいナニを」


「ちっちゃくねえよ!!」


「ほほう、ちっちゃくないなら証明して欲しいものだ」


「できるか!」


 武将ってこんな下ネタぶっこんでくるもんなの? メゲるわ。


「でも我の下着姿を見てもまだ普通に歩けているじゃないか。前かがみで一歩動けば絶頂に達するくらいしてもいいだろう?」


「そんなガッツリ興奮できるか! 戦闘中だったろうが!」


「そうか、まあいいさ。我は満足だ。抱き締められていい気分だった。夢心地というやつだね」


「なんて言っていいかわからないけど、勝ってよかったな。それじゃ……」


「話を、逸らさない、身体検査、まだ」


「チッ、覚えてやがったか」


 どさくさ紛れに逃げる大作戦は見事大失敗だ。


「逃げても無駄だ勇刀。そもそも勇刀の部屋を案内していない」


「まだ城のどこに何があるかもわからないだろう?」


 そうか、完全に自室に戻ろうとしていた。はっはっは、俺はまるで道化じゃねえか。

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