よくある兄妹の思考実験の二人が帰ってきた!

本作はよくある兄妹の思考実験の続編とも言える作品です。前作の主人公である兄の涙と妹の泪が高校のスクールカウンセラーや保健室の先生となった数年後が舞台です。
今回はゲスト的立ち位置でありながらもしっかりとその存在感を放つ湯島兄妹。うん、全然丸くなってない。むしろ悪化してます。(褒言葉) 外見上は素敵な大人になった二人ですが、兄は相変わらず思考実験好きで、妹はお兄ちゃん一筋。
やや変わった点と言えば思考実験そのものが事件の真相を解き明かし、直接的解決に結びつけているといった点でしょうか。
登場人物の喜劇的配役と演出が死人が出ているのに軽い調子でさらりと事件が閉幕する辺り、物語としての読みやすさに重点を置いていそうです。基礎的な心理学を用いてキャラの動機などに繋げている形式で事件の真相こそ人間の深層にあるものとし、心理学でそれらが全て分かってしまうという事を前提に構築されたミステリーです。
カウンセラー的立ち位置から言うと、本来なら心理学とはその人を深く知る為の足掛かりとして存在し、対話の中で患者と向き合って行くのが基本となり、初見の患者相手に思考や趣向、性格がぴたりと一致したり、心理学用語ペラペラと並べ立てたりする精神科医は居ないと思われる辺り、この兄、妹の特殊性が伺えます。
うん、というか総じてこの物語の登場人物はコミカルさを優先させた結果、変態しかいねぇ!と叫びたくなる事必須。私が読了した時点で(五万文字)主人公役の沁が作中唯一のオアシスと感じるほどに。一つ一つの事件をコンパクトに纏めた読みやすさはミステリー作品群の中でも群を抜いているものと思われます。この機会に本家の「よくある兄妹の思考実験」を読まれては如何でしょうか。こちらは事件の多様性の悍ましさをより考えさせられる作品となっております。(私もまだ全て読破した訳では無いですが)
パンツ要素は減りましたが、その分、今回はお兄ちゃんのイケメソ要素が強化されております。沁は彼らとの出会いを経て何を得るのか、私、気になります!

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