僕ははっきり言ってお化けが苦手です。
こちらから抵抗できない場合が多いし、呪い殺されたりとかしたらいやなので、嫌いです。
ですが、RAYさんの『東京歌姫 (トウキョウ・ディーバ)』を読んで少し見方が変わりました。
お化けは人の思いの塊なんですよね?
未練があって、この世界に留まっている人の思い。それはきっといろんな形で僕達に影響を与える。
いい意味でも、悪い意味でも。
それってすごい事なんじゃないかと思いました。そして、それほどの思いを果たして僕は残せるのかな? と考えました。
やっぱり、思いの物語はいい。
僕も思いを大事にこれからも物語を書いていきたいと再確認できました。
おすすめです(●´ω`●)
消防業務に携わる渡清志郎を献身的に支える幼馴染の西園寺綾音。
遡ること三百年前の江戸時代の『明暦の大火』で命を落としたシオンと水を司る神、水波能女神(ミヅハノメ)が会話している夢を見るようになった清志郎は新宿副都心にある三十階建てのタワーマンションの火災の際出動し、壮絶な救助活動の末、気を失う—。
仲間を失った心の傷を抱えた清志郎に付き添う綾音の前にある日、不意に現れた江戸の歌姫シオンは火の神、火之迦具土神(ヒノカグツチ)のこの世のすべてを焼き尽くそうとする憎悪の炎を封じ込めるべく頼みを持ちかける—。
エンターテイメント性を意識して練り込まれたプロットを生かす魅力的な登場人物たちに惹きこまれ、読み進めていく中で、BGMのように導入されている歌にも物語への思いが滲み出ていて素敵です。
現代と江戸時代の時空を超えるタイムトリップの魅力を生かした現代ファンタジーの世界に込められた作者の創作への意気込みが伝わる力作です。
神によって仕組まれてしまった悪意ある炎に立ち向かう、火消しと歌姫の物語です。
江戸時代から続く、火消しの家系に生まれ、また自らも火消しに携わる男、清志郎が主人公。彼の正義感ある性格、それを支える綾音のやりとり、戦闘シーンも素敵なのですが、それに加え本作の「歌姫」であるシオンの魅力が際立つ本編。時を超えて現れたシオンの男気ある性格が、清志郎とマッチしています。
展開では、何度、息を呑み涙がこぼれそうになったかわかりません。
全てを焼き尽くす炎と対峙するため、彼らは江戸時代へ向かいます。それは、神々の争いであり、また、その時代を駆け抜けた歌姫シオンが関わっているものでした。
これ以上はネタバレになるので、控えます。
ラストは、このような壮大なファンタジーにありがちな中途半端なものではなく、しっかりと着地の決まったものでした。鳥肌ものです。
この感動、ぜひ他の読者さんにも味わっていただきたいと強く思います。
作者さまの作品はいくつか拝読させていただいていますが、中でもこちらの作品は不思議な魅力に特に溢れていると感じました。
序盤の息苦しいくらいに緊迫した展開から、予想もしなかった展開へと繋がっていくストーリーは読みごたえ充分でした。
特筆すべき点は、なんといってもシオンというキャラクターです。愛くるしいキャラクターながら、そのバックボーンからくるギャップには何度も胸がうたれます。
さらには、シオンを囲むキャラクターたちも個性派揃いですから、そのやりとりやかけひきも楽しむことができます。
読後感もよく、ラストでは自然と涙が出てきます(私は作者さまの作品のラストでよく涙しています)。設定は決して甘くはないはずなのに、気づくと胸が温かくなるのは、やはりキャラクターたちがみせる絆のおかげだと思いました。
キャラクターものが好きな方、心温まる作品が好きな方には特にオススメします。
一人の女の子が魅せる舞台に、酔いしれてみてください!!
江戸時代から続く火消しの家系の末裔、清志郎。彼もまた、消防庁に勤めながら、最前線で炎と戦っていました。
危険な仕事であると言うのは百も承知。それでも誰かのために炎の中に飛び込んでいくのは、その血筋故か、はたまた彼本人の性分のなせる技か。
しかしそんな彼の前に、それまでの常識が全く通用しない、全てを一瞬にして焼き付くす謎の炎が現れます。それは遥か昔から続いた神々の戦い。そして、江戸時代に生きた一人の歌姫、シオンが関わっていました。
炎に立ち向かう清志郎とシオンがとにかくカッコいいです。現場での行動はもちろん、そこに至るまでの思いや執念がしっかり書かれているので、読んでいながら何度も「頑張れ」「負けるな」とエールを送っていました。
炎に立ち向かうそれぞれの勇姿をご覧ください。
まず、消防の知識が豊富で圧倒されます。
ですが、読者にわかりやすい言葉の説明が物語に組み込まれているので、読むのが苦ではありません。
だからこそ、火に対して、恐怖や無力さを痛感させられます。
そしてこちらの作品の火は、意思、それも悪意を持つ憎悪の炎でした。
神の意思により仕組まれた、全てを無に還す悪意の炎に立ち向かうのは、江戸の歌姫と現代の消防士。
そして現代の、もう1人の大切な仲間。
出逢う事がないはずの3人が出逢った時、運命は大きく動き出します。
こちらは是非ご自分で読んで、この3人の勇気を目に焼き付けてほしいです。
そしてこちらの作品の特徴の歌。
様々な歌が登場しますが、そのどれもが力強く、どこまでも透明で、心に優しく浸透していく想いの歌に感じます。
映像で観たいな、聴きたいな、と本気で思えるぐらい丁寧に描写されていますので、文字からその想いに聴き惚れて下さい。
最後に、これだけはご注意下さい。
人が多いところや、外出先で読む事はおすすめしません。
思いっきり泣けるこちらの作品は、1人で味わいながらご堪能下さい。
読まれたあなたにも、きっと歌姫の歌が聴こえるはずです。
でも最後になんか嬉しいホッとする気分になるのは何故?
一言でいうと江戸と東京、時間と場所をまたにかけた人情物語・・・。
という表現では括れないなぁ、時間を超えた恋愛小説・・・とも違うし。
結局、小説の王道をベースにさまざまな分野のエッセンスを放り込んだ作品に仕上がっている。スパイスは、江戸の人の粋と心意気+現在の都会人の信念と意外なモロさ・・・かな。いい塩梅に柱になってる気がします。
全般的に長編ものというのは、エンジンがかかり加速しだすと一気に盛り上がりいつのまにか次の展開をワクワクして待っようになる。
そこまでにいかにして飽きさせずつなげていくかということがとても重要になると思います。その辺の進化を感じますが、まだまだ進化できる要素を持っていると思います。今後の作品も楽しみです。
(なんで上から目線なの?と言われるかも知れませんが、読者はたいていそういうもんなんで・・・笑・・・汗)
RAYさんの作品全体に共通するキーワードは‘人を想う気持ちの強さ’だと勝手に思ってるですよね。その大切さと持っている無限大のエネルギーみたいなものが読み終わった満足感に混じって後味のように心に残る。
人柄と共に作品が多くの人に愛されるのはそこなんだと思う。
火災の現場で仲間をうしなって失意のそこにある現代の消防士が、濡れ衣をきせられて処刑された江戸時代の歌姫の幽霊と運命にみちびかれて出会い、気持ちをかよわせ、はるか昔から東京で大火災を引きおこしてきた火の神とたたかう過程が、迫力のある火災の現場や、大切な人たちをおもうふたりの気持ちの描写とともにつづられていました。
大切な人たちをうしない、うらまれながらも、長きにわたって人しれず東京を守りつづけてきた健気なシオンさんや、誰も死なせないというつよい信念をもつ清志郎さん、彼のよき理解者でもあり恩以上のものをかんじている綾音さんといった魅力的な登場人物たちが、火の神という強大な敵や、立ちはだかる過酷な運命にいどむ姿は、感動的で胸があつくなります。
消防士という男たちの命をかけた戦いからはじまり、熱い物語かと思っていましたが、時空をこえてやってきた歌姫、シオンがカワイイ。
物語が進むにつれて、どんどん可愛くなるので、清志郎とのシオンの距離感がとても良かったです。(でも、わたしは綾音が好きです)
物語の中には様々な歌が出てきますが、第41話で、「ロード・オブ・ザ・リング」のテーマソング「May It Be」が出てくれて、映画もエンヤも大好きなので嬉しかったです。
物語の場面が頭に浮かぶような文章力と、生き生きとした個性があるキャラクターたちが相まって、心から楽しめる物語でした。
ありがとうございます。