ゴブリンに転生したけど特に困ってはいないかもしれない
八神龍輝
ゴブリンの転生者「ギン」
旅立ち
第1話 過去と火事と
――どうしてこうなったのだろう。
自らが置かれている状況に、今更ながら、軽い絶望感を覚える。
簡単に説明しよう。
まず俺、ギンは、地球にて天才と呼ばれる人種であった。
―――
これは普通に国家間でも重大な案件として扱われており、いっそ殺してしまったほうがいいという意見も出た。俺も殺されても仕方がないと腹を括っていたのだが、最終的に国々は俺を利用した。まだ広まっていない技術、失われかねない技術を記憶させることでそれを大衆へと広めさせたのだ。
もちろん一般的な技術――機械の製造技術などの普通に生きていたら知ることのない技術ではあるが――も兼ね備えている。
…簡単にと言っておきながら、説明が長くなってしまったが、まあ要するに、普通じゃない人間だったわけだ。
で、だ。俺はその後技術を広めたのち寿命を迎えて死んだ。そこまではいい。問題はここからだ。
なぜか俺は記憶をそのままに、転生したのだ。いわゆる前世の記憶である。さらに、転生した俺は猿と豚を足して2で割ったような緑色の魔物―――そう、ゴブリンとなっていたのだった。
――うん、自分で言っときながらマジ訳わかんねぇや。
とにかく、現状に至るまでの自らの行動を簡単に纏めておくとしよう。
だがまずは、この世界についても語らねばなるまい。
―――と行きたいところだが、どうやらそうは言っていられなさそうである。
「ギンさん!火事だ、すでに家が何件か全焼している!手を貸してくれ!」
…え?
「一大事じゃねぇかっ!火が起きた時点で伝えろよ馬鹿野郎!」
「さーせぇん!」
俺は危機感を感じつつ、阿保を叱りつつ、現場へと向かった。
現場に駆け付けた時には二軒全焼、四軒半焼とかいう訳の分からん被害状況がそこにはあった。何故こんなになるまでほっといたし…。
仕方がないので家ごと消火する。丁度いい建て直しの機会だ、そう前向きに考えなければやってけない。
と、いう訳で、
「―――ハイウォータースプラッシュ」
強力な水魔法にて家を破壊…じゃなくて火を消す。とりあえずはこれでいいだろう。後処理は村の若い連中に任せておけばいい。家主たちが嘆いている。まあ、仕方ないとはいえ、家を破壊されたからな。当然だ。うん。罪悪感などないぞ。と思ってたら、
「えっと…私たちはどうしたら…」
まあそりゃ聞くわな。とりあえずの予定としては…
「ああ、後で新しいの建てとくから心配は無用だ。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
俺の建て直すという言葉にうれしそうにしているのは俺が何かを新しく作り直すとグレードが一つ高くなるとわかっているからだ。ちょろい。
さて、家に戻って続きを纏めるとしようか――――
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