食人青年×薄幸美女。極上の悲恋と、言葉に出来ない感情に打ち落とされろ。

 長命を得る為に、一人の人間を選んで食べる。そんな使命を背負い、ある街にやって来た青年、ウル。

 喫茶店でアルバイトをしながら、食べるべき人間を選定しようと過ごしていたウルの前に、もし人並みの体格ならば誰もが振り返るだろう美貌を持ちながら、恐ろしく瘦せこけた女性、ノラが現れる。店に通い始めた彼女は、煙草とコーヒーを嗜みながら読書をして過ごすのだが、食事は一切摂ろうとしない。

 そんなノラに興味を持ったウルは、ひょんな事から彼女と交流を持つ事になる。然しウルの選定の使命が、そしてノラも背負う抗い難い運命が、二人を報われない恋へ叩き落とす。

 作品の紹介文にあるように悲恋を扱った作品ですが、ただそれだけでは得られない読後感を味わえます。

 たとえば作中に現れる、「人を殺す時に必要なものとは何か」という問い。

 スマホと言った現代を思わせる道具が余り登場しない事からか、古い映画のようにゆったりと流れる、作中での時間。

 喫茶店のシーンでは、暫く飲んでいないコーヒーを飲みたくなって、匂いは好きなマルボロを思い出しました。

 そしてウルは、人を食べるという使命を全うするのか。ノラが背負う運命とは何なのか。何故、二人の恋は報われないのか。

 本作のタイトル、「紅心中」の意味を知った時、きっと言葉に出来ない気持ちに打ち落とされる。

 この最高の悲恋、是非見届けて下さい。

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