episode54 これからの道       夢浮橋

 ◇夢浮橋ゆめのうきはしざっくりあらすじ

 死んだと思っていた浮舟は生きていました。今でも浮舟のことを忘れられない薫はなんとかしてもう一度浮舟に会おうとします。



【超訳】夢浮橋ゆめのうきはし  宇治十帖

 薫 28歳 匂宮 29歳

 浮舟23歳


 ―― 薫、横川よかわへ ――

 比叡山での供養を終えた薫は横川へ向かうの。これまでそれほど親しい関係でない薫の突然の訪問に横川の僧都は驚きながらも丁重に出迎えるの。

 話のついでに小野の里に住んでいる女性は自分が探している人なんじゃないかって薫が切り出すの。全容を聞いた僧都の驚きようったらないのね。それに薫本人がこうして出向いて来てるくらいだからよほど深く愛しているんだなって思うの。だから彼女が必死に頼んできたこととはいえ、浮舟を出家させてしまったことを後悔するの。


 僧都も彼女を見つけてからのことを全て薫に話すの。本当に生きていてくれた。驚きながらも薫は夢の中のようにも感じて、僧都の前で思わず涙ぐむの。薫は今すぐにでも小野に連れて行ってほしいって僧都に頼むんだけれど、僧都に「いずれ……」とはぐらかされちゃうの。(僧都は浮舟はもう出家しちゃってるからいまさら恋愛沙汰は修行のさまたげになるって思っているみたい)

 だったらせめて一緒に連れてきた浮舟の弟の小君だけでも小野に遣いに出したいって考えて薫の手紙と僧都の手紙を持たせて小君に小野に行かせて自分は一旦都に戻ったの。


 ―― 小君、浮舟のもとへ ――

 浮舟のいる小野の里に誰かがやってくるようでたいまつが見えて行列の先導の声がしてくるの。

「横川に大将様がいらしてるって聞いたわ」

「大将様といったら(帝の)女二宮さまのお婿さまでいらっしゃる方ね」

 妹尼たちがそんな話をしているの。


 え? 本当に? 薫さまが通られるの?


 浮舟は困ってしまうの。そのうちに薫が宇治に通ってきたときにも聞いたことのある先導役のお供の声が聞こえてきたの。

 もう月日も経って、出家もしたのに昔の恋のことを思い出すなんて情けないわって思いながらも浮舟はドキドキしているみたい。  


 そうして小野の妹尼のところに横川の僧都の手紙が先に届くの。薫の使者がそちらに着いたかとか、早まって出家をさせてしまったことを悔やむとか書いてあって、妹尼には何がなにやらわからないみたい。浮舟はとうとう自分のことが薫に知られてしまったと動揺してしまうの。

 それからすぐに小君がやってくるの。小君は預かっている僧都からの手紙を差し出すの。

薫大将かおるのたいしょうの君がおいでになりあなたのことを聞かれましたので最初からお話しました。恋人がおありのあなたを出家させてしまったことを後悔しています」

「還俗(俗世に戻ること)して薫の君と夫婦に戻ってはいかがですか?」

 僧都の手紙は浮舟以外の人たちには何の話だかよくわからないみたいなの。

「あの子はあなたのご家族なの? あなたは(恋人のことも家族のことも)秘密になさるのね」

 妹尼は浮舟がまだ薫のことを隠そうとするからいらっときちゃったみたい。


 御簾の向こうには懐かしい小君の姿が見えるの。弟を見ているとお母さんのことが思い出されて浮舟はぽろぽろと涙をこぼすの。

「ご姉弟なんじゃないの? 座敷にお通ししましょうね」

 妹尼はそう言ってくれるのに浮舟はこのまま死んだままにしておいてほしいし、尼になった姿で身内に会いたくないって言うの。

「このまえいらした(薫の従者の)紀伊守きいのかみのお話に知っている人が出てきて記憶が少しずつ戻ってきました。母がどうしているかだけ心配です。この子は小さいときに見たことがあるような気がします。懐かしいですが、この人たちにも私が生きていることを知られたくないので会いません。母にだけは逢いたいのですが、僧都さまが書いていらっしゃる人(薫)にはどうしても私はいないことにしたいのです。どうか人違いだと言って下さい」

 浮舟は妹尼にそうお願いするの。


 ―― 薫からの手紙 ――

 事態が進まないので、妹尼が小君を屋敷内に入れて話を聞くの。薫からの手紙を直接浮舟に手渡したいって小君が言うので、妹尼は浮舟を几帳のそばまで連れてきて受け取らせるの。小君は(薫への)お返事をいただきたいって浮舟に伝えるの。

 薫からの手紙は懐かしい筆跡で、紙の香りもとっても高級なの。ちらっと覗き見する妹尼にも美しい手紙だってわかったみたいよ。


「尼になってしまったって聞いたよ。あのこと(匂宮とのこと)も行方をくらましたことも出家したことも何もかも許すよ。僕の悲しみがどんなだったか話がしたいんだ」

 罪つくりなことをしたけれど、すべて水に流して話がしたいって書いてあるの。


 ~ のりの師と 尋ぬる道を しるべにて 思はぬ山に 踏み惑ふかな ~

(仏法の師匠と仰いで僧都を道しるべにきたけれど、思いがけない恋の山に迷ってしまった)


 さすがに浮舟も感極まって涙を流すの。でもいまさら薫の前にのこのこと出ていくことなんてできないと思う浮舟はこんな手紙に心当たりはありませんって答えてしまうの。


 それはあまりにも失礼なんじゃないかしら? って妹尼が言うんだけれど、浮舟は顔を伏せてしまうの。仕方ないので妹尼は小君にありのままのことを薫に伝えてと話すの。結局小君は浮舟の顔を見ることができないまま、都に戻って行ったの。


 薫は小君が帰ってくるのをいまかいまかと待っていたんだけれど、小君の話を聞いて心底がっかりしちゃうの。

 こんなことなら直接行けばよかった、いや待てよ、昔の自分みたいに今は別の男が浮舟をそこで匿っているんじゃないの? と薫はあれこれ気を揉むのよね。


 ……そんな風に物語の本には書いてあるらしいわ。








 ◇浮舟が生きていると知った薫はなんとか会いたいとコンタクトをとろうとしました。浮舟も今でも薫のことを想っているようですが、再会ではなく出家してひとりで生きていく道を選んだようですね。

 これで源氏物語は完結です。



 ~ のりの師と 尋ぬる道を しるべにて 思はぬ山に 踏み惑ふかな ~

 薫が浮舟に贈った歌



 第五十四帖 夢浮橋

 源氏物語 完


 ☆☆☆

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 近日中にアップします。お待ちくださいね。



 ※【超訳】源氏物語全五十四帖が完結しました。

 本当に学ぶことの多い超訳でした。全編をご案内することができたのもお読みくださる皆様のおかげです。

 心から感謝申し上げます。

 ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました。




 桜井今日子


【超訳】源氏物語 ~ いつのころだったかしら? ~    完

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【超訳】 源氏物語   ~いつのころだったかしら?~ 桜井今日子 @lilas-snow

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