商店街を襲う災害に街の荒くれ者たちが立ち向かう話 ※災害=ドラゴン

 「ドラゴン」と「商店街」。非日常の象徴たる神話生物と日常の象徴たる互助組合。この親和しないはずのワードをつっつけたタイトルがまず強く目を惹く本作ですがその中身はどうかと言うと……驚くほどに相反する二要素が違和感なく絡み合う、質の高いエンターテイメント小説となっております。
 
 粗筋を大雑把に説明すると「商店街を襲う災害に街の荒くれ者たちが立ち向かう話」です。こう書くと「災害」がドラゴンなこと以外は案外オーソドックス。この手の話は「災害」が強大であればあるほど、「荒くれ者たち」が魅力的であればあるほどのめり込めるものですが、これがまあお見事。どちらの描写も際立っています。

 まず「災害」たるドラゴン。本作の「0日目」はドラゴン退治専門家の聖騎士団とドラゴンの戦いを通じてドラゴンの強大さを示すための章となっています。そしてその強さですが、半端ないです。RPGでありがちな、こちらの装備が整っていない序盤に終盤のボスが襲ってくる負けイベントならともかく、ドラゴンと対峙しているのはドラゴン退治専門家の聖騎士団。彼らが敗れたらその後に控えているのは街の草野球チーム。勝てるか。掛け値なしにそう思います。

 そして「荒くれ者」たる草野球チーム「新桜庭ゴブリンズ」。彼らのキャラ立ちも見事です。ドラゴンに立ち向かうメンバーには「新桜庭ゴブリンズ」以外の人員も含まれているため野球が出来る9人+αという多人数が作中に登場しますが、この全員が全員違う個性を持っていて魅力的です。個人的にはゴブリンズの主砲、ホセ・ミラモンテスが話すホセ語がセンス溢れていて最高でした。トモダチ!

 コメディ一辺倒かと思いきや身体の芯が凍るハードな展開や心が打ち震える熱い展開もあり、とにかく飽きさせない作りとなっています。果たして新桜庭ゴブリンズは見事ドラゴンを打ち破り、平和な商店街を取り戻すことが出来るのか。あまりにも無謀で、あまりにも感動的な伝説のゲームを皆様も是非ご観覧下さい。プレイボール!

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