ホームズ対李書文

作者 梧桐 彰

英国、ドイツ、中国——歴史小説としてのホームズ

  • ★★★ Excellent!!!

シャーロック・ホームズシリーズは、それが推理小説として優れているが故に、しばしば読者にとって時代性を無視した「永遠なるロンドン」での物語として読まれる。
もちろん専門で研究をする人間にとっては、ホームズ作品の持つ時代性は明らかであり、帝国主義の影響も、あるいはひそやかなナショナリズムも評論され続けてきたのだが、一般読者にとってはそう言った一連の歴史的関心はむしろ意識の外の背景事項に過ぎないだろう。


通常のホームズシリーズでは背景に徹しがちな「時代性」をぐいっと前面に引っ張り出してきたのがこの作品だ。19世紀末から20世紀初頭という、世界がまさに大きく動こうとしている時代の困難を、決して堅苦しくなく、躍動感をもって描いている。

謎めいた赤い服の女性。鉄道の旅。謎の死。人間とは思えない強さの中国の格闘家。

しっかりと組まれた構成と、文章レベルでのパスティーシュの妙。

ホームズを好きな方にも、あまりよくご存じない方にも。

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