現代に甦るカフカの魂

あなたは差別の正体をどれだけ理解していると言うのか?
言うまでもないことだが、『変身』はナチスにおけるユダヤ人差別の比喩として書かれた小説である※。この作品は、現代における差別されるべき存在としてヤスデ人間となってしまった主人公の葛藤がユーモラスに描かれている。

勿論、差別されるべき存在など許されてはならない。だが差別はいけないなどと、口先では言いながら、この中にヤスデ人間を目にして嫌悪を感じない人間がどれだけ居るだろうか。
私には恐らく無理だ。生理的に無理なモノは無理。それを人間に置き換えた時、私の中に眠る差別の正体が浮き彫りになるのである。

ちなみに、私は小学生の頃に『変身』をSF小説だと思って(授業中に)読んでいたので、教師に見つかっていたく褒められた時には逆に驚いてしまった経験がある。それ以来、夏休みの読書感想文は毎年『変身』を題材にしたので感想文も徐々にブラッシュアップされ、大変良い物になった。担任が違えば案外バレないものなのだろう。そう言えば、ここに書いた文章の一部は当時にも書いた覚えがある。

何が言いたいかと言うと、私はそのくらいカフカには詳しいんだぞ!というアピールである。一見分かりにくいとは思うが、この作品は随所に原作の文体模写まで取り入れられており、詳しい者でさえも唸らせる出来だ。
実を言うと私は最近『こたつ女』というオマージュを書こうとして、あまりに安易な発想だったのでボツにした経緯があるのだが、今は書かなくて良かったと心から思う。どう考えてもこの作者に任せた方が面白いし何より楽チンだから。

もし叶うならば、長編として続きを書いて貰って、人間の醜さや愛について更に深掘りして欲しいと思う。

※(という解釈もある)

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