宣伝する必要のない名作

野々さんは、将来デビューすることが確実な作家なのであまり宣伝する必要がない。カクヨムでは実力に比して評価が低いので、どうせ公募で賞を取るかなにかして自立していく人だからだ。
言わば、私はこの人の実力にこんな早くから目を付けていたのだ。どうだすごいだろう。と自慢するためだけにこれを書いている。

私の超ハイパーまとめ能力によれば、本作は、シャッター街になりつつある商店街で生まれ育った幼なじみの二人が、互いに想いを秘めながらもすれ違うラブストーリーである。

私のように副業で探偵をしている者にとっては常識であるが、たった一つの言葉によってその人となりが全て見えてしまうような“ひとこと”がある。状況から見て矛盾なく、またそうでなければならない言葉があるのだ。そして、そうでない場合は違和感を拠り所にして犯人を追い詰めていくことになる。細かいことがどうしても気になってしまう。僕の悪い癖。関係ない話なので、ここでは割愛させていただく。同じように野々さんの小説には、全ての状況を表現した光る一文というものが随所に見られる。
例えば「どこか危うい色香が感じられるようになっていた……」の「危うい」には、そう思ってはならない自制心の含意があり、「なっていた」には心境変化で異性としての確信を端的に表現している。非常に美しい。ちなみに私ならばここは「こいつ! 意外にエロいじゃん! グヘヘへ(ジュルリ)」などと書いてしまうところだ。

野々さんの文章には、男女の緻密な機微の表現がとてもセンス良くちりばめられていて、それは彼らの会話にも現れている。私のような探偵稼業の人間だと、「こいつは気のないふりをして嘘をついているな!」とピンとくるので、すぐに両想いだと見抜くことができるのだが、名探偵コナンを観ていて15分経っても犯人が推測できない人には少々難易度が高いかも知れない。

本来ならこのような駄文(ファンレター♡)は、応援コメントの片隅にでもこっそりと書き込み、他人から気がつかれないうちに作者によって消されるべきものだが、現在のところ諸事情によりコメント欄が閉じられているので仕方ない。
聡明なる諸兄らには、見て見ぬふりをして貰いたい。

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